オープンLLM勢力図2026。中国勢の攻勢、OpenAIの参入、Metaの離脱
「オープンモデルはどれを選べばいいか」という質問の答えは、この2年で完全に入れ替わりました。2026年のオープンLLMは中国勢が主役となり、OpenAIが初めてオープンウェイトモデルで参入し、Metaのフラッグシップはクローズドに転じています。本記事では、モデル名の羅列ではなくプレイヤーの動きに注目して、誰が何を出し、誰が何を出さなくなったのかを1枚の勢力図に整理します。
この記事の要点
- 2026年にローカルで現実的に動かせる主力は、Qwen3.5・gpt-oss・Gemma 4の3系統です。いずれもApache 2.0ライセンスで、2年前の「まずLlama」という常識は残っていません
- 中国勢が技術水準を牽引しています。Qwen3.5は0.8B〜397B MoEの段階公開、DeepSeek V4はMITライセンスで100万トークンのコンテキストを備えます
- OpenAIはGPT-2以来となるオープンウェイトモデルgpt-oss(20B/120B・Apache 2.0)で初参入しました。一方でMetaの新フラッグシップは重み非公開に転じています
- オープンモデルの世代交代は3〜6ヶ月周期です。特定モデルに固定しない設計と、入れ替えを前提にした運用が実務の基本になります
オープンLLM勢力図2026(陣営×代表モデルの一覧表)
まず、2026年時点の勢力図を1枚の表にまとめます。
| 陣営 | プレイヤー | 代表モデル | ライセンス | ローカル実用度 |
|---|---|---|---|---|
| 中国 | Alibaba(Qwen) | Qwen3.5(0.8B〜397B MoE) | Apache 2.0 | 高。サイズ展開が広くローカルの第一候補 |
| 中国 | DeepSeek | V4(MIT・1Mコンテキスト) | MIT | 本体は巨大。小型版・蒸留が実体 |
| 中国 | Moonshot / Zhipu / MiniMax | Kimi K2 / GLM系 / M2 | 寛容系中心 | 本体は巨大MoE。API利用が中心 |
| 米国 | OpenAI | gpt-oss 20B/120B | Apache 2.0 | 高。16GB機〜128GB機まで対応 |
| 米国 | Gemma 4(E2B〜31B) | Apache 2.0 | 高。小型〜中型の定番 | |
| 米国 | Meta | Llama 4(以降は主力クローズド) | Llama独自 | 中。新規採用は減少傾向 |
| 欧州 | Mistral | Mistral Large 3 / Small系 | Apache 2.0 | 中〜高。欧州のデータ主権文脈で強い |
| 日本 | 学術系・国産各社 | Swallow / LLM-jp ほか | 継承 / Apache | 日本語特化の選択肢 |
要点は明確です。ローカルで現実的に動かせる主力はQwen3.5・gpt-oss・Gemma 4の3系統になり、いずれもApache 2.0ライセンスです。2年前の「まずLlama」という常識は残っていません。3系統を並べると次の通りです。
| 系統 | 提供元 | サイズ展開 | ライセンス | 位置づけ |
|---|---|---|---|---|
| Qwen3.5 | Alibaba | 0.8B〜397B MoE | Apache 2.0 | サイズ展開が最も広く、ローカルの第一候補 |
| gpt-oss | OpenAI | 20B / 120B | Apache 2.0 | 16GB機〜128GB機まで対応。日本語強化版あり |
| Gemma 4 | E2B〜31B | Apache 2.0 | 小型〜中型の定番 |
なお表中の「ローカル実用度」は、モデルサイズと手元機材のメモリの関係で決まります。スペック表の読み方は『ローカルLLMの速度はメモリ帯域で決まる』で、国内企業が実際にどう導入しているかは『ローカルLLM国内導入事例2026』で解説しています。
激動の1年を時系列で振り返る
勢力図がどう動いてきたかを、時系列の表で整理します。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2025年4月 | MetaがLlama 4を公開。期待に届かず、最上位モデル(Behemoth)の公開は見送られたと報じられました |
| 2025年8月 | OpenAIがGPT-2以来のオープンウェイトモデルgpt-oss(20B/120B・Apache 2.0)を公開 |
| 2025年12月 | MistralがMistral Large 3をApache 2.0で公開 |
| 2026年2〜3月 | AlibabaがQwen3.5(0.8B〜397B MoE)を段階公開 |
| 2026年4月 | DeepSeekがV4系をMITライセンスで公開(100万トークンコンテキスト) |
| 2026年4月 | GoogleがGemma 4で独自ライセンスからApache 2.0に切り替え |
| 2026年 | Metaの新フラッグシップ(Muse Spark)は重み非公開のプロプライエタリモデルに |
わずか1年強で「オープンの旗手がクローズドへ、クローズドの巨人がオープンへ」という交差が起きています。陣営は固定ではなく、常に動くものだと分かります。
主役交代: 中国勢のMoE攻勢
Qwen3.5: 「迷ったらQwen」の地位を固めたサイズ展開
現在の主役はAlibabaのQwenです。Qwen3.5は2026年2〜3月に0.8Bから397B MoEまでを段階公開し、サイズ展開・日本語品質・Apache 2.0ライセンスの三拍子で「迷ったらQwen」の地位を固めました。日本語派生モデルのベースも、LlamaからQwenへの移行が進んでいます。
DeepSeek V4: MITライセンスの巨大MoE
DeepSeekは2026年4月にV4系をMITライセンスで公開しました。100万トークンのコンテキストを備えた1.6兆パラメータのMoEで、フロンティアモデルとの差を数ポイント台まで詰めています。ただし本体はローカル向きではなく、手元で動かす実体は小型版・蒸留版です。
Kimi・GLM・MiniMax: オープン公開とAPI利用の二層構造
Kimi(Moonshot)・GLM(Zhipu)・MiniMaxも同様に、巨大MoEをオープンに出しつつ、実利用はAPI経由が中心という構図です。中国勢の共通戦略は「最先端を寛容ライセンスで公開し、エコシステムを取る」ことにあります。オープンモデルの技術水準を引き上げているのは、現時点では間違いなくこの陣営です。
OpenAIの初参入: gpt-ossとは何か
2025年8月、OpenAIがGPT-2以来となるオープンウェイトモデルgpt-oss(20B/120B、Apache 2.0)を公開しました。「クローズドの代名詞」だった企業の参入は、オープンモデルが本流になったことの何よりの証明です。
日本では、東工大系チームによる日本語強化版(gpt-oss Swallow)が登場し、16GBメモリで動く20Bクラスの実用選択肢として広がっています。手元の予算・機材でどのクラスのモデルまで動かせるかは『予算別ローカルLLM PC 2026』で整理しています。
Metaの離脱とGoogleの方針転換
対照的な動きが2つあります。
Metaは2025年4月のLlama 4が期待に届かず、最上位モデル(Behemoth)の公開は見送られたと報じられました。2026年に発表された新しいフラッグシップ(Muse Spark)は重み非公開のプロプライエタリモデルです。Llama系のオープン公開が終了したわけではありませんが、オープンモデルの最前線をMetaが引っ張る時代は終わった、というのが実務側の受け止めです。オープンLLM運動の火付け役だったLlamaは、ELYZAや旧Swallowなど日本語派生モデルの土台という形で遺産を残しました。
Googleは逆方向に動きました。Gemma 3まで独自ライセンスだったものを、2026年4月のGemma 4でApache 2.0に切り替えています。モデルの性能・ライセンス・サイズ展開が揃い、GemmaはローカルLLMの定番の一角になりました。
同じ1年で「オープンの旗手がクローズドへ、クローズドの巨人がオープンへ」という正反対の転換が起きたことになります。特定の企業の路線を前提にした調達計画は、この速度の変化に耐えられません。
欧州と日本のオープンLLM
欧州ではMistralがMistral Large 3(2025年12月)をApache 2.0で公開し、フラッグシップ級を寛容ライセンスで出す路線に回帰しました。EUのデータ主権(ソブリンAI)文脈で、欧州企業の選択肢として存在感があります。
日本は学術系のSwallow・LLM-jpが日本語特化の基礎を支え、商用系では法人向け国産モデルが独自の市場を作っています。国産モデルの比較は『国産オンプレLLM比較2026。tsuzumi・PLaMo・cotomi・Takaneをどう選ぶか』で詳しく扱っています。政府のソブリンAI開発(デジタル庁の「源内」など)も動き出しており、日本語圏の選択肢は増える方向です。
実務者への含意: 何を選び、何に備えるか
勢力図から導ける実務の原則は3つです。
- 特定モデルに固定しない設計にします: 接続はOpenAI互換APIで統一し、RAGや業務フローはモデル交換可能に作ります。今年の最適解が来年の最適解である保証はありません。推論基盤側の乗り換え設計は『試作はOllama、本番はvLLM。乗り換えのタイミングと20倍の性能差』で解説しています
- ライセンスは都度確認します: 同じシリーズでも世代で条件が変わります(Gemmaが好例です)。稟議前の確認手順は『[2026年7月更新] オープンLLMライセンス早見表。「オープンソース=無制限」ではない』にまとめています
- 3〜6ヶ月の世代交代を運用に織り込みます: オープンモデルは更新が速いため、モデル入れ替えの手順と担当を最初から決めておきます。誰がその役割を担うのかという体制の問題は『導入したローカルLLM、誰が維持するのか』で扱っています
モデル選定前チェックリスト
オープンモデルの選定・稟議に入る前に、次の項目を確認してください。埋まっていない項目は、そのまま選定のやり直しや稟議の差し戻しにつながります。
- 用途と日本語要件を整理した(日本語品質はモデル系統で差があります)
- 候補モデルのライセンスを最新世代で確認した(Gemmaのように世代で条件が変わります)
- 手元の機材・予算で動かせるサイズかを確認した(gpt-ossは16GB機〜128GB機まで対応します)
- 接続をOpenAI互換APIで統一し、モデルを交換可能にする設計になっている
- RAG・業務フローが特定モデルに依存していない
- 3〜6ヶ月ごとのモデル入れ替えの手順と担当を決めた
まとめ
- 2026年のローカル主力はQwen3.5・gpt-oss・Gemma 4の3系統で、いずれもApache 2.0ライセンスです
- 中国勢(Qwen・DeepSeek等)が技術水準を牽引しています。最先端を寛容ライセンスで公開し、エコシステムを取る戦略です
- OpenAIが初のオープンウェイトモデルで参入し、Metaのフラッグシップはクローズドへ、GoogleはApache 2.0へ転換しました。陣営は1年で入れ替わります
- 実務では、モデル交換可能な設計・ライセンスの都度確認・世代交代前提の運用の3点で備えます
よくある質問
Q. 2026年のオープンLLMはどれを選べばいいですか?
ローカルで現実的に動かせる主力は、Qwen3.5(Alibaba)・gpt-oss(OpenAI)・Gemma 4(Google)の3系統で、いずれもApache 2.0ライセンスです。サイズ展開の広さと日本語品質からQwen3.5が第一候補になりやすく、「迷ったらQwen」と言われる地位にあります。手元の予算・機材でどのモデルが動くかは『予算別ローカルLLM PC 2026』を参照してください。
Q. Llamaはもう使わないほうがいいですか?
Llama系のオープン公開が終了したわけではありません。ただし2025年4月のLlama 4が期待に届かず、最上位モデル(Behemoth)の公開は見送られたと報じられ、2026年の新フラッグシップ(Muse Spark)は重み非公開のプロプライエタリモデルになりました。新規採用は減少傾向で、オープンモデルの最前線をMetaが引っ張る時代は終わったというのが実務側の受け止めです。ELYZAや旧Swallowなど日本語派生モデルの土台としての遺産は残っています。
Q. gpt-ossとは何ですか?ローカルで動きますか?
OpenAIが2025年8月に公開した、GPT-2以来となるオープンウェイトモデルです。20Bと120Bの2サイズがApache 2.0ライセンスで提供され、16GBメモリの機材から128GB機まで対応します。日本では東工大系チームによる日本語強化版のgpt-oss Swallowが登場し、16GBメモリで動く20Bクラスの実用選択肢として広がっています。
Q. DeepSeekはローカルLLMとして使えますか?
本体はローカル向きではありません。2026年4月にMITライセンスで公開されたDeepSeek V4は、100万トークンのコンテキストを備えた1.6兆パラメータのMoEで、フロンティアモデルとの差を数ポイント台まで詰めていますが、手元で動かす実体は小型版・蒸留版です。Kimi(Moonshot)・GLM(Zhipu)・MiniMaxも同様に、巨大MoEをオープンに公開しつつ実利用はAPI経由が中心です。
Q. オープンソースLLMのライセンスで注意すべき点は何ですか?
同じシリーズでも世代で条件が変わる点です。GoogleのGemmaはGemma 3まで独自ライセンスでしたが、2026年4月のGemma 4でApache 2.0に切り替わりました。逆にMetaのLlamaは独自ライセンスのままです。「オープンソース=無制限」ではないため、稟議の前に必ず採用する世代のライセンス条件を確認してください。
Q. 日本語に強いオープンLLMはどれですか?
Qwen3.5がサイズ展開・日本語品質・Apache 2.0の三拍子で第一候補になりやすく、日本語派生モデルのベースもLlamaからQwenへの移行が進んでいます。日本語強化版のgpt-oss Swallowや、学術系のSwallow・LLM-jpも選択肢です。tsuzumi・PLaMo・cotomi・Takaneといった国産商用モデルとの比較は『国産オンプレLLM比較2026』で解説しています。
Q. オープンLLMの世代交代にはどう備えればいいですか?
オープンモデルは3〜6ヶ月周期で世代交代が起きるため、接続をOpenAI互換APIで統一し、RAGや業務フローをモデル交換可能に設計しておくことが基本です。あわせてモデル入れ替えの手順と担当を最初から決めておく必要があります。運用体制の考え方は『導入したローカルLLM、誰が維持するのか』で扱っています。
主な参考資料: Alibaba Qwen3.5リリース(CodeZine)、DeepSeek-V4 Preview公開(パレイド)、Google Gemma 4発表(GIGAZINE)、Meta Muse Spark解説(AI革命)、Introducing Mistral 3(Mistral AI)
TodoONadaでは、ローカルLLM・生成AIの導入判断からPoC・構築までを支援しています。用途・日本語要件・ライセンスを踏まえたモデル選定、モデル交換可能なRAG・業務システム設計、世代交代を前提にした運用・更新体制の設計までを一貫してお手伝いします。まずは30万円・2週間規模のミニ検証からで、「今ならどのモデルか」の選定相談だけでも歓迎します(費用の全体像は『ローカルLLM導入費用の実額内訳』を、構成はGPUサーバーのローカルLLM導入支援とMac 1台のMacで始める社内専用AI導入支援をご覧ください)。
この記事に関連するサービス
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出典・参照
- Qwen3.5は2026年2〜3月に0.8Bから397B MoEまでを段階公開 (2026年7月6日確認)
- 2026年4月にV4系をMITライセンスで公開 (2026年7月6日確認)
- Muse Spark (2026年7月6日確認)
- 2026年4月のGemma 4でApache 2.0に切り替えています (2026年7月6日確認)
- Mistral Large 3(2025年12月) (2026年7月6日確認)