デジタル認証サービスへ名称変更。顔写真提供も始まる
デジタル庁の「デジタル認証アプリサービス」が「デジタル認証サービス」へ名称を変えます。あわせて、APIで顔写真を取得できる新機能が追加されます。きっかけは2026年8月25日に提供が始まる「マイナアプリ」です。
すでに連携している事業者にとっては「自社の実装は動き続けるのか、何を直す必要があるのか」が、これから連携する事業者にとっては「新しい前提で何が設計できるようになるのか」が判断ポイントになります。本記事では、名称変更で何がどう変わるのか、新機能「顔写真」の中身と使いどころ、そして連携済み・連携予定の事業者が確認すべきことを、発注者・開発責任者の視点で整理します。確認日: 2026年8月19日。
この記事の要点
- 2026年8月25日提供開始の「マイナアプリ」に、利用者が使うデジタル認証アプリが統合されます。事業者向けの基盤名称は「デジタル認証サービス」へ変わります
- 認証API・署名APIは互換性が維持され、既存実装の修正は不要です。ただしデザインガイドラインの一部改訂に伴い、画面文言・ロゴの反映は必要です
- 新機能はスコープ
pictureによる顔写真の取得、複数署名のV2エンドポイント、スマホ用電子証明書対応の3つです- 顔写真はUserInfoのクレーム
pictureとしてBase64(data URI形式)で返り、属性情報は認可レスポンス返却後60分で破棄されます- 顔写真の利用は法令要件の確認とデジタル庁への問い合わせが前提です。「取れるから取る」ではなく業務上の必要性から設計してください
何が起きているのか。マイナアプリへの統合
まず前提を整理します。デジタル庁は2026年8月25日に、iOS/Android向けの「マイナアプリ」の提供を開始します。多くの人が使っている「マイナポータルアプリ」に、官民のサービスで本人確認に使われてきた「デジタル認証アプリ」の仕組みを統合したアプリで、アプリストア上では現マイナポータルアプリが呼称を変えて配信されます。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2026年1月22日 | デジタル庁が統合計画を発表。事業者向け案内で「サービス名は『デジタル認証サービス』へと変更予定」と明記 |
| 2026年8月25日 | マイナアプリ提供開始(予定)。デジタル認証アプリの機能はマイナアプリへ |
| 8月25日以降 | デジタル認証アプリを開くとマイナアプリへ誘導。移行状況を見てデジタル認証アプリは提供終了予定 |
ここで名前の関係がややこしくなるので、利用者が触るものと事業者が組み込むものを分けて押さえてください。
- 利用者が触るアプリ: 「デジタル認証アプリ」は「マイナアプリ」に統合されて消えます
- 事業者が組み込むAPI基盤: 「デジタル認証アプリサービス」は「デジタル認証サービス」へ名称変更されます
つまり「アプリ」という言葉が実態と合わなくなったための改称です。認証の裏側を担うサービス自体はなくなりません。むしろマイナアプリという大きな器に乗って続いていく、というのが正しい理解です。サービスの基本的な仕組みと料金の構造から知りたい方はデジタル認証アプリとは。民間サービスが使うための条件・料金・できないことから読むのがおすすめです。
社内での説明資料を書くときは、この2階層を分けて書くことをおすすめします。経営層への報告で「デジタル認証アプリが終了する」とだけ伝えると、自社サービスの認証機能が止まるという誤解を招きます。終わるのは利用者向けアプリの名前であって、事業者が使っているAPI基盤は継続します。
名称変更で事業者側の実装は変わるのか
結論から言えば、既存の連携実装はそのまま動きます。デジタル庁は事業者向けの案内で次を明言しています。
- 現在提供中の認証API・署名APIは互換性を維持しており、既存実装の修正は不要
- 利用者が認証・署名時に起動するアプリは、自動的にデジタル認証アプリからマイナアプリへ切り替わる
- 統合にあわせて機能追加を実施。事前の動作確認用にテスト環境を提供予定
- デザインガイドラインが一部改訂されるため、画面上の文言・ロゴ等は反映が必要
放置しても認証が止まるわけではありません。ただし、「デジタル認証アプリで本人確認します」といった文言を自社サービスの画面やヘルプに書いている場合は、マイナアプリ・デジタル認証サービスへの書き換えが必要になります。地味な作業ですが、対応漏れが起きやすいのはまさにここです。
実務としては、次の場所を洗い出しておくと漏れを防げます。
- 本人確認フローの案内画面・ボタンラベル・エラーメッセージ
- ヘルプセンター、FAQ、利用ガイドのテキストとスクリーンショット
- 利用規約・プライバシーポリシー内の固有名詞
- カスタマーサポートの応対マニュアル、チャットボットのシナリオ
- 会員向けメール・プッシュ通知のテンプレート
- 営業資料、Webサイトの機能紹介ページ
システム改修が不要であるがゆえに、開発チームのタスクリストからこぼれやすい領域です。この対応はエンジニアではなく、カスタマーサポートや広報を含めた横断タスクとして誰かに割り当てるのが確実です。
新機能「顔写真」の中身
今回の統合はただの看板の掛け替えではなく、機能追加を伴います。デジタル庁の開発者サイトに掲載されている実装ガイドラインでは、マイナアプリ公開に伴って有効になる機能として次の3つが挙げられています。
| 新機能 | 内容 |
|---|---|
| 顔写真の取得 | 認可リクエストのスコープに顔写真を追加 |
| 複数署名 | 一度の操作で複数文書へ署名できるV2エンドポイントを新設 |
| スマホ用電子証明書対応 | スマートフォンに搭載した電子証明書(スマホ用電子証明書)での利用に対応 |
複数署名のV2エンドポイントは、契約書と付随書類を同時に締結するような業務で操作回数を減らせる改善です。スマホ用電子証明書対応は、カードを取り出さずに完結する導線が使えるようになるという点で、離脱率に効く可能性があります。
そして本命が顔写真です。APIリファレンスから仕様を拾うと次のとおりです。
- OpenID Connectのスコープとして
pictureを指定して要求する - UserInfoエンドポイントのクレーム
pictureとして、Base64エンコードされた画像データ(data URI形式)で返却される - 属性情報は認可レスポンス返却後60分で破棄されるため、事業者側は60分以内に取得する必要がある
- 提供時期は「2026年夏頃よりマイナアプリにて利用可能」
これまでデジタル認証アプリサービスの認証APIで取得できる属性情報は、基本4情報(氏名・住所・生年月日・性別)などが中心でした。そこにマイナンバーカードの顔写真が加わる形になります。
設計上、注意すべきは60分の破棄制約です。認可レスポンスを受け取ってから属性取得までを非同期のバッチに回すような構成や、審査担当者の手作業を挟んでから取得するような運用を組んでいると、期限を過ぎて取得できなくなります。取得処理は認証フローの中で確実に完了させ、失敗時のリトライも60分以内に収まる設計にしてください。
なお、顔写真を含む属性情報についてデジタル庁は「取得を検討される場合には、法令の要件を確認した上でお問い合わせください」と案内しています。スコープを指定すれば誰でも取れるという類のものではありません。 慎重な取り扱いが求められる属性として位置づけられています。
顔写真が取れると何が変わるのか
マイナンバーカードの公的個人認証(JPKI)は「電子証明書が有効で、暗証番号を知っている本人がカードを持っている」ことを保証します。しかしこれまで事業者側には、本人の顔がわからないという特性がありました。オンラインの本人確認はそれで完結しても、その後の業務で顔の情報が欲しくなる場面があります。
顔写真提供によって現実的になりそうなユースケースを挙げます。
- オンライン契約後の対面照合: 口座開設や入会をオンラインで済ませ、来店・来場時に登録済みの顔写真と目視または顔認証で照合する
- 社員証・会員証・入館証の発行: 本人確認と同時にカード品質の顔写真が手に入るため、別途の写真提出が不要になる
- セルフ撮影(セルフィー)方式の置き換え: 従来のeKYCで使われてきた「カード撮影+自撮り」の照合を、ICチップ由来の顔写真で置き換える
背景には本人確認ルール全体の再編があります。政府は非対面の本人確認をマイナンバーカードの公的個人認証に原則一本化し、本人確認書類の画像送信方式(いわゆるホ方式など)を廃止する方針を進めています。携帯電話不正利用防止法は2026年、犯罪収益移転防止法の施行規則改正は2027年に向けて動いており、eKYC実務は「券面の撮影」から「ICチップと電子証明書」へ移行していきます。この移行の全体像は犯収法2027年改正とJPKI一本化と携帯電話不正利用防止法の2026年改正で詳しく扱っています。
その移行後も顔情報が必要な業務のために、公的な経路で顔写真を渡せるようにした、と位置づけると理解しやすいはずです。券面撮影方式が消えることで顔写真の入手経路が失われる業務は少なくありません。今回の追加はその穴を埋める性格を持っています。
一方で注意も必要です。顔写真は生体情報に直結するデータであり、取得目的の明示、保存期間、照合システム側の安全管理など、個人情報保護法上の設計論点が一気に増えます。「取れるようになったから取る」ではなく、業務上どうしても顔情報が要るのかから検討すべきです。 顔照合を実装する場合の閾値設計の考え方は顔照合の閾値設計にまとめています。
事業者が今やること
立場別に整理します。
既に連携している事業者
- APIの改修は不要です。8月25日前後の切り替わりをテスト環境で確認してください
- 画面文言・ヘルプ・デザインガイドライン改訂への追従を計画してください(開発以外の部門を含む横断タスクとして割り当てる)
- 新機能(顔写真・複数署名・スマホ用電子証明書)が自社の業務改善に使えるかを、この機会に棚卸ししてください
これから連携する事業者
- 申込・契約の手続きは従来どおり重めです(事前準備契約と本契約の2段階)。手続きの実務はデジタル認証アプリ連携の開発実務にまとめてあります
- 新しい名称(デジタル認証サービス/マイナアプリ)を前提に、社内資料と画面文言を最初から作ってください
顔写真の利用を検討する事業者
- 法令要件を整理したうえでデジタル庁へ問い合わせてください
- 取得した顔写真の保存・照合・削除の設計をセットで用意してください
- 60分の破棄制約を前提に、認証フローの中で取得を完了させる設計にしてください
対応チェックリスト
- 自社サービスの画面・ヘルプ・規約・メールテンプレートから「デジタル認証アプリ」の表記を洗い出した
- 表記変更の担当部門(開発・CS・広報・法務)と期限を割り当てた
- デザインガイドライン改訂版を確認し、ロゴ・ボタン表現の差分を把握した
- テスト環境で8月25日前後の起動アプリ切り替わりを確認する計画を立てた
- 新機能3つ(顔写真・複数署名V2・スマホ用電子証明書)が自社業務に有効かを評価した
- 顔写真を使う場合、取得目的・保存期間・削除手順・安全管理措置を文書化した
- 顔写真を使う場合、法令要件を整理したうえでデジタル庁へ問い合わせた
- 属性取得を認可レスポンス返却後60分以内に完了させる実装・リトライ設計にした
まとめ
- 2026年8月25日提供開始の「マイナアプリ」に、デジタル認証アプリが統合されます
- 事業者向けの基盤は「デジタル認証アプリサービス」から「デジタル認証サービス」へ名称変更されます
- 既存のAPI連携は互換性が維持され修正不要です。ただし画面文言とデザインガイドライン対応は必要で、この対応は開発以外の部門も巻き込む横断タスクになります
- 新機能としてスコープ
pictureによる顔写真の取得、複数署名(V2エンドポイント)、スマホ用電子証明書対応が追加されます - 顔写真はUserInfoのクレーム
pictureにBase64(data URI形式)で返り、属性情報は認可レスポンス返却後60分で破棄されます - 顔写真の利用は法令要件の確認とデジタル庁への問い合わせが前提です。本人確認のJPKI一本化の流れの中で、対面照合や証明写真代替といった用途が開けます
よくある質問
Q. デジタル認証アプリはいつからマイナアプリに変わりますか?
2026年8月25日にiOS/Android向けの「マイナアプリ」の提供が開始される予定です。マイナポータルアプリにデジタル認証アプリの仕組みを統合したアプリで、アプリストア上では現マイナポータルアプリが呼称を変えて配信されます。8月25日以降はデジタル認証アプリを開くとマイナアプリへ誘導され、移行状況を見てデジタル認証アプリは提供終了予定です。
Q. デジタル認証サービスへの名称変更で既存のAPI実装を修正する必要はありますか?
APIの修正は不要です。デジタル庁は現在提供中の認証API・署名APIについて互換性を維持しており既存実装の修正は不要であること、利用者が起動するアプリは自動的にマイナアプリへ切り替わることを明言しています。ただしデザインガイドラインが一部改訂されるため、画面上の文言・ロゴ等の反映は必要です。
Q. 「デジタル認証アプリ」と「デジタル認証サービス」はどう違いますか?
利用者が触るスマホアプリが「デジタル認証アプリ」で、これはマイナアプリに統合されて消えます。事業者が組み込むAPI基盤の名称が「デジタル認証アプリサービス」から「デジタル認証サービス」へ変更されます。「アプリ」という言葉が実態と合わなくなったための改称で、認証の裏側を担うサービス自体は継続します。
Q. マイナンバーカードの顔写真はAPIで取得できますか?
2026年夏頃よりマイナアプリにて利用可能となる予定です。OpenID Connectのスコープとして picture を指定して要求し、UserInfoエンドポイントのクレーム picture としてBase64エンコードされた画像データ(data URI形式)で返却されます。ただしデジタル庁は「取得を検討される場合には、法令の要件を確認した上でお問い合わせください」と案内しており、スコープを指定すれば誰でも取れるものではありません。
Q. 顔写真の取得に時間制限はありますか?
あります。属性情報は認可レスポンス返却後60分で破棄されるため、事業者側は60分以内に取得する必要があります。非同期バッチや手作業の審査を挟んでから取得する構成にしていると期限を過ぎる可能性があるため、認証フローの中で取得を完了させ、リトライも60分以内に収まる設計にしてください。
Q. 顔写真が取れると何ができるようになりますか?
JPKIはこれまで「電子証明書が有効で暗証番号を知っている本人がカードを持っている」ことは保証しても、事業者側に本人の顔がわからないという特性がありました。顔写真提供により、オンライン契約後の来店時の対面照合、社員証・会員証・入館証の発行(別途の写真提出が不要になる)、従来のeKYCの「カード撮影+自撮り」照合の置き換えといった用途が現実的になります。
Q. 顔写真を扱ううえで注意すべき点は何ですか?
顔写真は生体情報に直結するデータであり、取得目的の明示、保存期間、照合システム側の安全管理など個人情報保護法上の設計論点が増えます。「取れるようになったから取る」のではなく、業務上どうしても顔情報が必要かという検討から始めるべきです。利用する場合は法令要件を整理したうえでデジタル庁へ問い合わせ、保存・照合・削除の設計もセットで用意してください。
主な参考資料: デジタル庁「2026年夏頃のマイナポータルアプリへの統合に伴う民間事業者・行政機関へのご案内」、デジタル庁「『マイナアプリ』の提供開始は、2026年8月25日を予定しています」、デジタル庁「デジタル認証アプリの機能は、2026年8月25日からマイナアプリでご利用いただける予定です」、デジタル庁 開発者サイト「行政機関等・民間事業者向け実装ガイドライン」、デジタル庁 開発者サイト「APIリファレンス(民間事業者向け)」、デジタル庁「マイナンバーカードの『安全・便利なオンライン取引』構想を進めるために(令和7年8月 v2.4)」
TodoONada株式会社では、マイナンバーカード認証(JPKI・eKYC)を組み込んだWebサービス・スマホアプリの受託開発を行っています。デジタル認証サービス連携や顔写真活用の要件整理、名称変更に伴う画面文言・ガイドライン追従の棚卸しからご相談いただけます。デジタル庁「デジタル認証アプリ(デジタル認証サービス)」の利用申請・審査対応は書類作成から指摘対応まで伴走し、方式選定(JPKI・IC読取り・画像方式)から開発・運用までワンストップで対応します。料金の目安は認証機能組込みプラン150万円〜、認証込みアプリ開発プラン400万円〜、大規模・個別要件は1,000万円〜です。本人確認方式の全体像はeKYC完全マップ2026にまとめていますので、あわせてご覧ください。ご相談はマイナンバーシステム導入支援またはお問い合わせからお気軽にどうぞ。
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出典・参照
- デジタル庁「2026年夏頃のマイナポータルアプリへの統合に伴う民間事業者・行政機関へのご案内」 (2026年8月19日確認)
- デジタル庁「『マイナアプリ』の提供開始は、2026年8月25日を予定しています」 (2026年8月19日確認)
- デジタル庁「デジタル認証アプリの機能は、2026年8月25日からマイナアプリでご利用いただける予定です」 (2026年8月19日確認)
- デジタル庁 開発者サイト「行政機関等・民間事業者向け実装ガイドライン」 (2026年8月19日確認)
- デジタル庁 開発者サイト「APIリファレンス(民間事業者向け)」 (2026年8月19日確認)
- デジタル庁「マイナンバーカードの『安全・便利なオンライン取引』構想を進めるために(令和7年8月 v2.4)」 (2026年8月19日確認)