携帯電話不正利用防止法。2段階改正と対応期限

携帯電話不正利用防止法。2段階改正と対応期限

携帯電話不正利用防止法の改正について調べると、「2026年4月に厳格化された」という記事と「これから対象が広がる」という記事が混在していて、自社がいつまでに何をすべきか分かりにくくなっています。混乱の原因は単純で、2026年の改正が「施行規則の改正(施行済み)」と「法律本体の改正(公布済み・施行待ち)」の2段階で進んでいるからです。本記事は、MVNO・データSIM事業者・販売代理店などの経営者・システム担当者に向けて、この2段階を犯収法と混ぜずに整理し、事業者ごとの対応事項と期限を明確にします。法令確認日: 2026年8月23日。

この記事の要点

  • 改正は2段階です。第1段は施行規則の改正(2026年4月施行済み)で、契約時のオンライン本人確認から画像送信型が外れ、IC読み取り・公的個人認証(JPKI)に厳格化されました
  • 第2段は法律本体の改正(2026年5月29日公布・施行待ち)で、これまで対象外だったデータ通信専用SIMやプリペイド型にも本人確認義務が広がります。施行は公布から1年以内の政令指定日で、遅くとも2027年5月29日までです
  • 最も影響が大きいのは、これまで本人確認と無縁だったデータSIM専業の事業者です。確認フロー・記録保存をゼロから構築することになります
  • 犯収法(方式厳格化は2027年4月1日施行)とは所管も対象も期限も別の法律ですが、要求される技術基盤(IC読み取り・JPKI・記録保存)は共通で、1つの基盤を両方に流用できます

この法律は何を定めているか

携帯電話不正利用防止法は、他人名義の携帯電話が特殊詐欺などの犯罪インフラとして使われることを防ぐため、携帯音声通信の契約時・譲渡時に本人確認を義務づける法律です。義務を負うのは大手キャリアだけではありません。MVNO(格安SIM)、販売代理店、レンタル携帯事業者にも及びます。所管は総務省です。

ここで最初に押さえるべきなのは、警察庁(JAFIC)所管の犯罪収益移転防止法(犯収法)とはまったく別の法体系だという点です。どちらも「本人確認」という同じ言葉を使うため解説記事では頻繁に混同されますが、対象取引(携帯契約か、金融取引等か)、確認方法を定める省令、改正スケジュールのすべてが別物です。本人確認の法令記事を読むときは、まず「どちらの法律の話か」を確かめることをおすすめします。オンライン本人確認の方式全体の見取り図はeKYC完全マップ2026を参照してください。

第1段: 施行規則改正——2026年4月施行済み

第1段は確認「方式」の厳格化です。携帯契約のオンライン本人確認から、本人確認書類の画像を撮影・送信するタイプの方法が廃止され、ICチップ読み取りや公的個人認証(JPKI)を使う方法に厳格化されました。券面の写真とセルフィーを送る、いわゆる従来型のeKYCは携帯契約では使えなくなっています。

注目すべきは順序です。犯収法でも同じ方向の方式厳格化が2027年4月1日に施行されますが、携帯契約では約1年先行して同種の変更が施行された形です。犯収法側の方式変更で何が残り何が消えるかは2027年以降のeKYC方式で詳しく整理しています。

第1段はすでに施行済みのため、オンラインで携帯契約を受け付ける事業者は対応が完了しているはずの段階です。もし自社のオンライン契約フローに画像送信ベースのeKYCが残っている場合は、直ちに確認が必要です。

第2段: 法律本体の改正——公布済み・施行待ち

第2段は確認「対象」の拡大です。改正法案は2026年3月24日に閣議決定・国会提出され、2026年5月29日に公布されました。中心は次の2点です。

  • これまで本人確認義務の対象外だったデータ通信専用SIMが対象に加わります
  • プリペイド型についても本人確認の義務化が盛り込まれました

背景には、本人確認なしで入手できるデータSIMが、SMS認証の回避や犯罪の連絡手段として使われてきた実態があります。

施行日は「公布から1年以内で政令が定める日」とされており、遅くとも2027年5月29日までに施行されます。本記事の執筆時点(2026年8月23日)では施行日を定める政令は確認できていないため、現在は「公布済み・施行待ち」の段階として扱ってください。裏を返せば、施行日の政令はいつ出てもおかしくなく、対象となる事業者は政令を待たずにフロー構築の検討を始めるべき段階です。

事業者別・対応事項の早見表

事業者第1段(施行済み)の影響第2段(施行待ち)の影響
キャリア・MVNO(音声)オンライン契約フローのIC/JPKI化(対応済みのはず)既存基盤の対象取引拡大
データSIM専業・IoT向けSIM影響なし新たに本人確認義務。フロー・記録の新規構築
プリペイド型の販売影響なし販売時の本人確認の組み込み
販売代理店店頭でのIC読み取り運用対象商材の拡大
中古スマホ・回線セットの事業古物営業法との複合対象判定の再整理

最も影響が大きいのは、これまで本人確認業務と無縁だったデータSIM専業の事業者です。確認フロー(IC読み取りまたはJPKI)、確認記録の作成・保存、譲渡時の扱いまでを、施行日までにゼロから構築することになります。

新規構築にあたっての方式・調達の考え方は、犯収法対応で蓄積された知見がそのまま使えます。IC読み取りとJPKIの違いと選び方はeKYCとJPKIの比較、スマートフォンだけで完結する読み取りフローはスマホでのマイナンバーカードeKYC、ベンダー選定の観点はeKYCサービスの選び方・20項目、確認記録の保存設計は本人確認記録の保存要件を参照してください。

犯収法との対比——別の法律、同じ技術基盤

項目携帯電話不正利用防止法犯収法
所管総務省警察庁(JAFIC)・各事業所管省庁
対象携帯音声通信の契約・譲渡(改正後はデータSIM等も)金融機関・クレカ・宅建・貴金属等の特定取引
方式厳格化の施行2026年4月(施行済み)2027年4月1日
対象拡大の施行政令指定日(遅くとも2027年5月29日)

通信と決済、通信と買取など、両方の法律の対象になる事業を持つ会社では、対応が「先に携帯法、続いて犯収法」の順で走ることになります。ここで重要なのは、法律は別でも要求される技術要素——ICチップ読み取り、JPKI、確認記録の保存——は共通だという点です。先に施行された携帯法対応で作ったIC読み取り・記録保存の基盤は、犯収法対応にそのまま流用できます。基盤を1つ作れば複数の業法に効く、という視点で投資判断をすると二重開発を避けられます。

データSIM事業者の準備チェックリスト

第2段の施行を待つ事業者が、いま確認しておくべき項目です。

  • 自社の商材(データSIM・プリペイド・IoT向け)が改正後の対象に含まれるかを整理した
  • 本人確認方式(IC読み取り/JPKI)と、自社サービスへの組み込み経路を検討した
  • オンライン・店頭・法人販売など、販売チャネルごとの確認フローを洗い出した
  • 確認記録の作成・保存(媒体・期間・検索性)の設計に着手した
  • 譲渡時・名義変更時の確認フローを検討対象に含めた
  • eKYCベンダーに依頼する範囲と自社開発する範囲の境界を決めた
  • 施行日の政令が出た場合に開発が間に合うか、リードタイムを逆算した

まとめ

  • 携帯電話不正利用防止法の2026年改正は2段階です。方式の厳格化(2026年4月施行済み)と、データSIM・プリペイドへの対象拡大(2026年5月29日公布)に分かれます
  • 第2段の施行は公布から1年以内の政令指定日で、遅くとも2027年5月29日までです。執筆時点で施行日の政令は未確認のため「公布済み・施行待ち」の段階です
  • 画像送信型のeKYCは携帯契約ではすでに使えません。フローに残っている場合は直ちに確認が必要です
  • データSIM専業事業者は新たに本人確認義務を負います。政令を待たず、フロー・記録保存の構築検討を始める段階です
  • 犯収法(2027年4月1日施行の方式厳格化)とは別の法律ですが、IC読み取り・JPKI・記録保存という技術基盤は共通で、1つの基盤を両対応に流用できます

よくある質問

Q. 携帯電話不正利用防止法の2026年改正では何が変わりましたか?

改正は2段階あります。第1段は施行規則の改正で、2026年4月に施行済みです。携帯契約のオンライン本人確認から画像送信型の方法が廃止され、ICチップ読み取りや公的個人認証(JPKI)に厳格化されました。第2段は法律本体の改正で、2026年5月29日に公布されました。データ通信専用SIMやプリペイド型への本人確認義務の拡大が中心で、施行は公布から1年以内の政令指定日(遅くとも2027年5月29日)です。

Q. データ通信専用SIMにも本人確認が必要になるのですか?

改正法の施行後は必要になります。これまでデータ通信専用SIMは本人確認義務の対象外でしたが、本人確認なしで入手できるデータSIMがSMS認証の回避や犯罪の連絡手段に使われてきた実態を受けて、2026年5月29日公布の改正法で対象に加えられました。施行は遅くとも2027年5月29日までの政令指定日です。データSIM専業の事業者は確認フローと記録保存の新規構築が必要になります。

Q. 改正法はいつから施行されますか?

第1段(方式の厳格化)は2026年4月にすでに施行されています。第2段(データSIM・プリペイドへの対象拡大)は2026年5月29日に公布され、施行日は公布から1年以内で政令が定める日、つまり遅くとも2027年5月29日までに施行されます。2026年8月23日の執筆時点では施行日を定める政令は確認できていません。

Q. 携帯電話不正利用防止法と犯収法はどう違いますか?

別の法律です。携帯電話不正利用防止法は総務省所管で携帯音声通信の契約・譲渡が対象、犯収法は警察庁(JAFIC)・各事業所管省庁が所管で金融機関・クレジットカード・宅建・貴金属等の特定取引が対象です。方式厳格化の施行時期も、携帯法が2026年4月、犯収法が2027年4月1日と異なります。ただし要求される技術(IC読み取り・JPKI・記録保存)は共通で、基盤は流用できます。

Q. 画像送信型(写真アップロード型)のeKYCは携帯契約でもう使えませんか?

使えません。2026年4月施行の施行規則改正で、本人確認書類の画像を送信するタイプの方法は携帯契約のオンライン本人確認から廃止されました。ICチップ読み取りまたは公的個人認証(JPKI)を使う方法への切り替えが必要で、オンライン契約を受け付ける事業者はすでに対応が完了しているはずの段階です。

Q. MVNOや販売代理店も対応が必要ですか?

必要です。本人確認義務は大手キャリアだけでなく、MVNO(格安SIM)、販売代理店、レンタル携帯事業者にも及びます。音声SIMを扱うMVNOは第1段のIC/JPKI化対応、販売代理店は店頭でのIC読み取り運用が対象で、第2段の施行後は対象商材がデータSIM等にも広がります。

主な参考資料: 総務省 携帯電話の契約者本人確認等森・濱田松本法律事務所 携帯電話不正利用防止法の改正についてショーケース 2026年4月改正の解説

TodoONada株式会社は、マイナンバーカード認証(JPKI・eKYC)を組み込んだWebサービス・スマホアプリの受託開発を行っています。犯収法・携帯電話不正利用防止法など業種ごとの本人確認要件の整理から、方式選定(JPKI・IC読み取り・画像方式)、開発・運用までワンストップで支援しており、データSIM事業者の本人確認フロー新規構築のご相談も可能です。料金の目安は認証機能組込みプラン150万円〜、認証込みアプリ開発プラン400万円〜です。詳しくはマイナンバーシステム導入支援、ご相談はお問い合わせからどうぞ。


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