マイナンバーカード本人確認を自社サービスに組み込む方法は4つ。費用と選び方を開発の視点で整理する

マイナンバーカード本人確認を自社サービスに組み込む方法は4つ。費用と選び方を開発の視点で整理する

「自社サービスにマイナンバーカードの本人確認を入れたい」。2027年4月の犯罪収益移転防止法改正(オンライン本人確認のJPKI一本化)を控えて、この相談が増えています。改正の中身と時系列は犯収法2027年改正とJPKI一本化にまとめました。

問題は、そこから先です。実際に組み込む方法を調べると、情報がベンダーの営業ページと公的機関の仕様書に二極化していて、全体像がつかめません。営業ページには「簡単に導入できます」としか書いておらず、仕様書には制度の細部しか書いていない。その中間にある「自社の場合はどれを選ぶべきか」という判断材料が、どこにも揃っていないのが実情です。

本記事は、発注者・事業会社の意思決定者が予算と期間を社内に説明できる状態になることを目的に、実務で取れる4つの方法を費用感・期間・向き不向きで整理します。

この記事の要点

  • 組み込み方法は「eKYCベンダー」「デジタル認証アプリ」「プラットフォーム事業者と直接契約」「自社認定」の4つです
  • 選定の出発点は件数の見積もりです。従量課金の単価×想定件数によって、方法間のコスト優劣は逆転します
  • ログイン強化が目的なら、デジタル認証アプリの認証APIは手数料無料です。ただし基本4情報の取得や電子署名には別途契約が必要です
  • 犯収法対応が目的なら、署名用電子証明書を扱える方法1(eKYCベンダー)か方法3(プラットフォーム事業者と直接契約)になります
  • 「まず方法1で対応し、件数が伸びたら方法3へ移行」という段階設計も現実的な選択肢です

デジタル庁のマイナンバー制度・マイナンバーカードのページ

出典: デジタル庁「マイナンバー(個人番号)制度・マイナンバーカード」(2026年7月時点の画面)

前提 — 「ログイン」と「本人確認」は別の要件

方法の比較に入る前に、1つだけ揃えておくべき前提があります。マイナンバーカードには2種類の電子証明書が入っており、用途が分かれていることです。

  • ログイン・当人認証: 利用者証明用電子証明書(氏名・住所は取得できません)
  • 犯収法の本人確認・電子署名: 署名用電子証明書(基本4情報が取得できます)

「会員登録時に本人確認をしたい」のか「ログインを強くしたい」のかで、使う証明書が変わり、必要な契約相手が変わり、結果として費用構造まで変わります。ここが曖昧なまま複数社から見積もりを取ると、比較不能な数字が並ぶことになります。証明書ごとの制約や運用論点は署名用と利用者証明用の違いで詳しく整理しています。

社内の要件定義でまず確定させるべき問いは、次の1つです。「氏名・住所・生年月日を取得する必要があるか」。ここがYesなら署名用、Noなら利用者証明用で足ります。

方法1: eKYCベンダーのSaaS/SDKを組み込む

LiquidやTRUSTDOCKに代表されるeKYCベンダーのサービスを利用する方法です。本人確認画面のSDKやAPIが提供されており、自社アプリ・Webに組み込むだけでJPKI方式の本人確認が動きます。

  • 費用感: 初期費用は無料〜数百万円、月額2〜10万円程度に加えて、従量課金が1件50〜300円程度が相場です
  • 期間: 最短で数週間〜
  • 強み: 主務大臣認定まわりをベンダーが保有しているため、契約するだけで署名用電子証明書の検証・失効確認まで利用できます。犯収法対応の実績とノウハウも蓄積されています
  • 弱み: 件数が増えると従量課金が効いてきます。画面フローのカスタマイズはSDKの範囲内に制約されます

迷ったらここから検討するのが定石です。特に、2027年対応の駆け込みでベンダーの窓口が混雑する前に、複数社の見積もりを取っておくことをおすすめします。相見積もりでは従量単価だけでなく、最低利用料・SDKの提供範囲・障害時のサポート体制まで揃えて比較してください。内製と外部サービスの損益分岐の考え方はeKYCは作るか買うかで扱っています。

方法2: デジタル庁「デジタル認証アプリ」と連携する

デジタル庁が提供する公式アプリとのAPI連携です。ユーザーはデジタル認証アプリでマイナンバーカードを読み取り、事業者側はOpenID Connect(認可コードフロー)で結果を受け取ります。行政サービス専用ではなく民間事業者も利用でき、東京都公式アプリなどの導入事例が出ています。

  • 費用感: 認証API(ログイン・当人認証)は手数料無料です。署名API(基本4情報の取得や電子署名)はJPKIプラットフォーム事業者との有償契約と届出が必要になります
  • 期間: 利用申請〜審査〜接続テストのプロセスがあります
  • 強み: 国の公式アプリであるためユーザーへの説明がしやすく、認証だけであれば手数料がかかりません。実装は標準的なOIDCで、認証基盤(Cognito等)との接続例も公開されています
  • 弱み: ユーザーにデジタル認証アプリのインストールを求める導線が必要です。署名APIを使う場合は結局プラットフォーム事業者との契約が発生します

「ログインの本人性を強くしたい」「行政寄りのサービスを提供している」なら第一候補です。一方、犯収法の本人確認として使う場合は、署名API側の契約構造まで確認しないと予算が崩れます。申請条件・審査プロセスの実務はデジタル認証アプリの利用条件と料金にまとめています。

なお期間の見積もりで注意すべきは、開発工数ではなく申請と審査のリードタイムです。ここを開発スケジュールに含めずに計画すると、リリース日が動きます。

方法3: JPKIプラットフォーム事業者と直接契約して組み込む

主務大臣認定を受けた民間のプラットフォーム事業者(署名検証者)と契約し、そのAPI経由で署名検証・失効確認を行う方法です。eKYCベンダーのパッケージ化された画面を使わず、読み取りから結果処理までを自社のUXで設計できます。

  • 費用感: 契約・従量の体系は事業者ごとに異なります。開発費は自社持ちです
  • 期間: 数ヶ月規模の開発になります
  • 強み: 画面フロー・データ連携の自由度が高く、既存の会員基盤や業務システムとの深い統合ができます。大量件数であれば単価面でも有利になり得ます
  • 弱み: NFC読み取り(スマホアプリ側)の実装、エラー・失効時のフロー設計など、開発すべき範囲が広くなります

「eKYCベンダーのSaaSでは業務フローに合わない」「本人確認を事業の中核機能として作り込みたい」場合の選択肢です。受託開発会社が関わるのは、主にこの領域になります。プラットフォーム事業者を使う立場(SP)と自社で認定を取る立場(PF)の責任分界はJPKIのPF方式とSP方式で比較しています。

方法4: 自社が認定を取得する(署名検証者・プラットフォーム事業者になる)

公的個人認証法に基づく主務大臣認定を自社で取得し、J-LISと直接つないで署名検証・失効確認を行う方法です。

  • 費用感・期間: 認定取得の体制整備(セキュリティ要件・監査対応)を含め、年単位・大規模投資になります
  • 強み: 外部依存がなく、自社がプラットフォームとして他社にサービス提供できます
  • 弱み: 本人確認を事業の柱にする企業以外には過剰です

eKYCベンダーやプラットフォーム事業者自身がこの立場にあります。一般の事業会社が選ぶことはまずありません。認定の実務的な重さはJPKIの民間利用で詳しく扱っています。

4つの方法を1枚で比較する

方法1: eKYCベンダー方法2: デジタル認証アプリ方法3: PF事業者と直接契約方法4: 自社認定
初期費用無料〜数百万円開発費のみ(認証APIは手数料無料)開発費+契約大規模投資
ランニング月額+1件50〜300円程度認証は無料、署名は契約次第契約次第自社運用費
導入期間数週間〜申請・審査+開発数ヶ月〜年単位
UXの自由度SDKの範囲内アプリ遷移が前提高い最も高い
向いているケース早く確実に犯収法対応したいログイン強化・行政寄りサービス既存システムと深く統合したい本人確認が事業の柱

この表で最も注意して読むべきは「ランニング」の行です。初期費用は一度きりですが、従量課金は事業が伸びるほど増えます。方法1と方法3のコスト優劣は、想定件数によって逆転します。したがって、比較の出発点は「どの方法が安いか」ではなく「自社の月間件数はどれくらいか」という問いになります。

選び方の目安

要件から逆引きすると、判断はかなり単純になります。

  • 犯収法対応が目的で、件数が読めない・急いでいる → 方法1(eKYCベンダー)
  • ログイン・当人認証を強くしたい → 方法2(デジタル認証アプリ、認証APIは手数料無料)
  • 月間件数が多い、または業務システムとの統合が深い → 方法3(直接契約+受託開発)
  • 本人確認サービス自体を売りたい → 方法4(自社認定)

実際の案件では、「まず方法1で2027年対応を済ませ、件数が伸びたら方法3へ移行する」という段階設計も採られます。最初にどこまで内製するかを決め切らないこと自体が、1つの有効な選択肢です。要件が固まっていない段階で方法3や方法4に踏み込むと、投資を回収する前に前提が変わるリスクがあります。

マイナンバーカード本人確認の選び方と段階設計を示す図

本人確認方式全体の地図はeKYC完全マップ2026に、関連記事をどの順で読むと理解が早いかはeKYC記事の読み方ガイドにまとめてあります。

発注前に埋めておくべきチェックリスト

見積もり依頼の前に、次の項目を社内で確定させておくと、ベンダーからの回答の精度が変わります。

  • 取得する情報の範囲 — 本人性だけか、氏名・住所・生年月日まで必要か
  • 月間・年間の想定件数 — 従量課金の総額はここで決まります。レンジでも構いません
  • リリース希望時期 — 申請・審査・接続テストのリードタイムを含めて逆算されているか
  • UXの譲れない部分 — SDKの画面で許容できるか、自社デザインが必須か
  • 既存システムとの連携範囲 — 会員基盤・業務システムとの統合はどこまで必要か
  • 未成年ユーザーの有無 — 署名用電子証明書は15歳未満に原則発行されないため、代替フローの要否に関わります
  • 確認記録の保存方針 — 何を自社に保存し、何をベンダー側に置くか
  • 将来の移行可能性 — 方法1から方法3へ移る場合、データと運用をどう引き継ぐか

まとめ

  • 組み込み方法は「eKYCベンダー」「デジタル認証アプリ」「プラットフォーム事業者と直接契約」「自社認定」の4つです
  • ログイン強化が目的なら、デジタル認証アプリの認証APIは手数料無料です。犯収法対応なら署名用電子証明書を扱える方法1か方法3になります
  • 費用は従量課金の単価×想定件数で逆転が起きます。件数の見積もりが選定の出発点です
  • 方法2は開発工数より申請・審査のリードタイムがスケジュールを支配します。計画に織り込んでください
  • 「まず方法1で対応し、件数が伸びたら方法3へ移行」という段階設計も現実的です。最初に内製範囲を決め切らないことも選択肢です
  • 2027年4月の犯収法改正で駆け込みが予想されるため、方式の決定は2026年内が現実的です

よくある質問

Q. マイナンバーカード本人確認を自社サービスに組み込む方法は何がありますか?

大きく4つです。eKYCベンダーのSaaS/SDKを組み込む方法、デジタル庁のデジタル認証アプリと連携する方法、JPKIプラットフォーム事業者と直接契約する方法、自社が主務大臣認定を取得する方法です。費用・期間・UXの自由度がそれぞれ異なり、目的と想定件数から選ぶことになります。

Q. eKYCベンダーを使う場合の費用相場はどのくらいですか?

初期費用は無料〜数百万円、月額2〜10万円程度に加えて、従量課金が1件50〜300円程度が相場です。導入期間は最短で数週間からです。主務大臣認定まわりをベンダーが保有しているため、契約するだけで署名用電子証明書の検証・失効確認まで利用できる点が強みです。

Q. デジタル認証アプリは無料で使えますか?

認証API(ログイン・当人認証)は手数料無料です。ただし署名API(基本4情報の取得や電子署名)を使う場合は、JPKIプラットフォーム事業者との有償契約と届出が必要になります。「国のアプリだから無料」という前提で予算を組むと、犯収法の本人確認が要件に入った時点で計画が崩れるため注意してください。

Q. 導入期間はどのくらいかかりますか?

方法によって大きく異なります。eKYCベンダー経由は最短で数週間、デジタル認証アプリは利用申請〜審査〜接続テストのプロセスに開発期間が加わります。プラットフォーム事業者との直接契約は数ヶ月規模の開発、自社認定は年単位です。開発工数だけでなく、申請・審査・接続テストのリードタイムを含めて逆算してください。

Q. どの方法を選べばよいか判断の目安を教えてください。

犯収法対応が目的で件数が読めない・急ぐ場合はeKYCベンダー、ログイン強化が目的ならデジタル認証アプリ、月間件数が多いか業務システムとの統合が深い場合はプラットフォーム事業者との直接契約、本人確認サービス自体を売りたい場合は自社認定です。判断の出発点は想定件数の見積もりになります。

Q. 最初から自社で作り込んだほうが安く済みますか?

件数次第です。従量課金は事業が伸びるほど増えるため、大量件数では直接契約のほうが有利になり得ます。一方、件数が読めない段階で開発範囲を広げると、投資を回収する前に前提が変わるリスクがあります。実務では「まずeKYCベンダーで対応し、件数が伸びたら直接契約へ移行する」という段階設計も採られます。

Q. いつまでに方式を決めるべきですか?

2026年内が現実的です。2027年4月の犯収法改正に向けて駆け込みが予想され、ベンダーの窓口やプラットフォーム事業者の接続テスト枠が混雑する可能性があります。複数社の見積もりを取る時間も含めて、早めに動くほど選択肢が広く残ります。

主な参考資料: デジタル庁 デジタル認証アプリ(民間事業者向け)デジタル庁 開発者サイト 実装ガイドラインデジタル庁 マイナンバー(個人番号)制度・マイナンバーカードNexway eKYC導入費用解説

TodoONada株式会社では、マイナンバーカード認証(JPKI・eKYC・デジタル認証アプリ連携)を組み込んだWebサービス・スマホアプリの受託開発を行っています。方式選定(JPKI・IC読取り・画像方式)からベンダー比較の壁打ち、開発・運用までワンストップでご支援し、デジタル庁「デジタル認証アプリ」の利用申請・審査対応も書類作成から指摘対応まで伴走します。料金の目安は認証機能組込みプラン150万円〜、認証込みアプリ開発プラン400万円〜、大規模・個別要件は1,000万円〜です。「4つの方法のどれが自社に合うのか」という段階からのご相談も、マイナンバーシステム導入支援またはお問い合わせからお気軽にどうぞ。


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