2027年施行後のeKYC方式一覧と移行チェックリスト

2027年施行後のeKYC方式一覧と移行チェックリスト

2027年4月1日に犯罪収益移転防止法(犯収法)施行規則の改正が施行されると、いま主流の「書類の画像+自撮り」による本人確認は使えなくなります。本記事は、施行後に使える本人確認方式の一覧と、現行方式からの移行プロジェクトで確認すべき項目を、実務で使えるチェックリストの形で整理したものです。「2027年4月以降、どの方式が使えて、移行のために何をすべきか」を判断したい事業会社の担当者・意思決定者に向けて書いています。

現行方式の早見表と号記号の新旧対照はeKYCの方式一覧が、用語や部品レベルの全体像はeKYC完全マップ2026が担当しているため、本記事では施行後の姿と移行作業に絞ります。法令確認日: 2026年8月23日(警察庁 2026年3月公表の改正Q&Aに基づく)。

この記事の要点

  • 施行後の非対面本人確認は「IC+顔」「IC+口座」「原本・郵便」「スマホ搭載」「公的個人認証(JPKI)」の5系統に整理されます
  • いま主流の「書類の画像+自撮り」(現行ホ方式)はなくなります。ただしマイナンバーカード限定ではなく、免許証等のIC搭載書類も使えます
  • 移行作業は「方式の置き換え」だけでなく、確認記録・例外フロー・社内規程まで波及します。2026年内の方針決定が現実的なデッドラインです
  • 施行前に完了した確認記録の再確認義務はない方向が警察庁Q&Aで示されており、移行対象は「施行後に新しく発生する確認」です

施行後に使える非対面方式の全体像

2027年4月1日以降、犯収法施行規則6条1項1号の非対面(オンライン)方式は次の5系統になります。

新規則の号方式の中身使える書類・手段実装の要点
ICチップ情報 + 容貌の撮影マイナンバーカード、運転免許証、在留カード、特別永住者証明書、旅券等のIC搭載書類NFC読み取り + 顔照合。IC情報と券面情報の照合が必要
ICチップ情報 + 既存口座への照会または少額振込同上 + 銀行API/振込確認書類画像の選択肢は廃止。IC読み取りが必須に
原本送付またはIC + 転送不要郵便等対象書類を限定した郵送系現行の「ホ=画像方式」とは別物。誤読に注意
カード代替電磁的記録スマホ搭載のマイナンバーカード機能認定プログラムでの送信・確認
公的個人認証(JPKI)マイナンバーカードの署名用電子証明書署名検証 + J-LIS失効確認。事実上の本命

覚え方はシンプルです。「画像を送る確認は消え、ICを読むか署名するかになる」

一方で、施行後も選択肢が1つに絞られるわけではない点は強調しておきます。「JPKIだけになる」わけでも「マイナンバーカードだけになる」わけでもありません。運転免許証や在留カードなどIC搭載書類の読み取り系と、JPKIが併存します。自社のユーザー層に合わせて複数方式を組み合わせる「方式ポートフォリオ」の発想が、移行設計の出発点になります。

対面・郵送も同時に変わる

2027年改正は非対面だけの話ではありません。対面と郵送の確認フローにも影響します。

  • 対面: 写真付き書類の「提示を受ける」だけの確認は終わり、IC読み取りが原則になります。店頭にICリーダー(またはスマホでの読み取りフロー)が必要です
  • 郵送系: 写真なし書類2点などの現行方式は廃止・統合され、対象書類が限定されます
  • 例外処理: ICが読み取れない場合の扱いとして、合理的期間内の後処理が認められる方向が警察庁Q&Aで示されています。「読めなかったら即取引不可」ではなく、pending状態を持つフロー設計が可能です

窓口を持つ事業者は、オンラインの改修と並行して店頭フロー・機材の見直しも計画に含めてください。

移行チェックリスト。5ステップで漏れなく進める

移行プロジェクトで確認すべきことを、実施する順番に並べます。

ステップ1: 現状の棚卸し

  • 自社の本人確認が発生する取引を列挙する(口座開設、契約、高額取引、再確認)
  • 各取引で使っている方式を現行の号で特定する(ホなのか、ヘなのか、トなのか)
  • 年間の確認件数と方式別の内訳を出す(移行後の従量費用の試算に使います)

ステップ2: 移行先の決定

  • 現行ホ方式の取引を「IC+顔(新ハ)」に寄せるか「JPKI(新ヌ)」に寄せるかを決める
  • 判断軸3つを評価する: 対象ユーザーのマイナンバーカード保有率、取得したい情報(基本4情報が要るか)、1件あたり単価
  • マイナンバーカードを持たないユーザーの受け皿(免許証等のIC読み取り、郵送系、対面)を必ず残す

ステップ3: ベンダー・契約の確認

  • 現行eKYCベンダーの契約プランに移行先方式が含まれるか、単価はいくらになるかを確認する
  • SDKのバージョンアップ範囲と、アプリ側の画面フロー改修量を見積もる
  • ベンダー継続か乗り換えかを比較する(比較の観点はeKYCベンダー比較を開発者の目で読むを参照してください)
  • 自社開発・組み込みに切り替える場合の費用感を把握する(eKYC導入費用の相場に費用構造を整理しています)

ステップ4: システム・運用への波及確認

  • 確認記録(7年保存)の項目が方式変更で変わるため、記録スキーマとマイグレーションの要否を確認する
  • IC読み取り失敗・顔照合失敗・PINロック時の例外フローと、カスタマーサポート導線を設計する
  • 社内の取引時確認規程・マニュアルの改定と、審査担当者の教育を計画に入れる

例外フローの設計不足は、移行後の離脱率上昇や審査部門の混乱に直結します。先行事例で何がつまずきの原因になったかはeKYC導入の失敗パターンにまとめています。

ステップ5: スケジュールを逆算する

時期やること
2026年内棚卸し・移行先決定・ベンダー選定または開発着手
2027年1〜2月実装・改修、規程改定、記録スキーマ移行
2027年3月テスト・切り替えリハーサル
2027年4月1日新方式で運用開始

施行日から逆算すると、実装・テストに充てられる期間は2027年に入ってから3ヶ月しかありません。方針決定とベンダー選定(または開発着手)を2026年内に終えることが、現実的なデッドラインです。

既存顧客の再確認は必要か

移行計画で必ず出る論点なので、明確にしておきます。施行前に完了した確認記録を再確認する義務はない方向が、警察庁Q&Aで示されています。つまり移行対象は「施行後に新しく発生する確認」であり、既存顧客全員の再確認プロジェクトを組む必要はありません。

ただし、継続的顧客管理の要請は別論点として残ります。既存顧客に対するリスクベースの再確認を行う場合、その時点で使える方式は新規則のものになるため、再確認フローも新方式前提で設計しておく必要があります。

まとめ

  • 施行後の非対面方式は「IC+顔(ハ)」「IC+口座(ニ)」「原本・郵便(ホ)」「スマホ搭載(ト)」「JPKI(ヌ)」の5系統です
  • 画像送信は消えますが、選択肢はJPKIだけではありません。IC搭載書類の読み取り系と併存するため、カード非保有者の受け皿まで含めた方式ポートフォリオを組んでください
  • 改正は対面(IC読み取り原則化)・郵送系(廃止・統合)にも及びます
  • 移行は方式の置き換えにとどまらず、確認記録・例外フロー・規程・教育まで波及します。棚卸しと方針決定は2026年内に終えるのが現実的です
  • 施行前に完了した確認の再確認義務はない方向が警察庁Q&Aで示されており、移行対象は施行後の新規確認です

よくある質問

Q. 2027年4月以降に使えるeKYCの方式は何ですか?

非対面では5系統です。ICチップ情報+容貌の撮影(新規則ハ)、ICチップ情報+既存口座への照会または少額振込(新規則ニ)、原本送付・転送不要郵便等の郵送系(新規則ホ)、スマホ搭載のマイナンバーカード機能(新規則ト)、公的個人認証JPKI(新規則ヌ)です。書類の画像を送信する方式はなくなります。

Q. 2027年以降、運転免許証での本人確認はできなくなりますか?

できます。ただし「撮影した画像を送る」方法は廃止され、運転免許証のICチップを読み取る方法に変わります。運転免許証・在留カード・特別永住者証明書・旅券などのIC搭載書類は、IC+顔(新規則ハ)やIC+口座(新規則ニ)の方式で引き続き使えます。

Q. eKYCの移行はいつまでに何を決めるべきですか?

施行日は2027年4月1日で、2027年に入ってからは実装・改修・テストで期間が埋まります。したがって、現状の棚卸し・移行先方式の決定・ベンダー選定(または開発着手)を2026年内に終えるのが現実的なデッドラインです。2027年1〜2月に実装と規程改定、3月にテストと切り替えリハーサルという逆算になります。

Q. 既存顧客の本人確認をやり直す必要はありますか?

施行前に完了した確認記録を再確認する義務はない方向が、警察庁の改正Q&Aで示されています。移行対象は施行後に新しく発生する確認です。ただし継続的顧客管理の要請は別論点として残るため、リスクベースで再確認を行う場合は新方式前提のフローが必要になります。

Q. ICチップが読み取れないユーザーへの対応はどうすべきですか?

警察庁Q&Aでは、ICが読み取れない場合の扱いとして合理的期間内の後処理が認められる方向が示されています。「読めなかったら即取引不可」ではなく、確認をpending状態にして後続処理につなぐフロー設計が可能です。あわせて、読み取り失敗・顔照合失敗・PINロック時の例外フローとサポート導線を用意しておくことが、移行後の離脱防止に効きます。

Q. 2027年の改正で本人確認はマイナンバーカードだけになりますか?

なりません。JPKI(新規則ヌ)とスマホ搭載のカード機能(新規則ト)はマイナンバーカード系ですが、IC+顔(新規則ハ)とIC+口座(新規則ニ)は運転免許証などのIC搭載書類でも成立します。郵送系(新規則ホ)や対面も残るため、カード非保有者の受け皿を含めた複数方式の組み合わせが設計の前提になります。

主な参考資料: 警察庁 2026年3月公表の改正Q&A(PDF)警察庁 犯罪収益移転防止法の改正資料一覧e-Gov 犯罪収益移転防止法施行規則金融庁 オンラインで完結可能な本人確認方法の概要(PDF)

TodoONada株式会社では、マイナンバーカード認証(JPKI・eKYC)を組み込んだWebサービス・スマホアプリの受託開発を行っています。犯収法など業種ごとの本人確認要件の整理から、方式選定(JPKI・IC読取り・画像方式)、開発・運用までワンストップで支援し、デジタル庁「デジタル認証アプリ」の利用申請・審査対応も書類作成から指摘対応まで伴走します。料金の目安は認証機能組込みプラン150万円〜、認証込みアプリ開発プラン400万円〜、大規模・個別要件は1,000万円〜です。現行方式の棚卸しと移行方針の整理からのご相談は、マイナンバーシステム導入支援またはお問い合わせからどうぞ。


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