マイナ免許証を事業者はどう扱うか

マイナ免許証を事業者はどう扱うか

レンタカーの貸出、社用車を運転する社員の採用、配送・営業職の免許確認。これまで「運転免許証を見せてもらってコピーを取る」で完結していた業務が、マイナ免許証の登場で成立しなくなりつつあります。マイナ免許証は券面に免許情報が印字されないためです。本記事は、現場の受付フローを決める運用責任者と、業務システムに免許確認を組み込む開発責任者に向けて、何がどう変わり、どこまでシステム化できるのかを整理します。情報は2026年7月時点のものです。

この記事の要点

  • マイナ免許証は券面に免許の種類・有効期限・条件が一切印字されません。目視とコピーによる確認は成立しません
  • 確認の実質的な手段は、本人が4桁の暗証番号を入力してICチップを読み取ることです。警察庁が無料の読み取りアプリを配布しており、レンタカー事業者等の利用も明示されています
  • 2026年6月末時点の保有者は約357万人。うち「マイナ免許証のみ」が約100万人で、従来免許証を持たない顧客・従業員は既に無視できない規模です
  • 「免許の資格確認」と「犯収法の本人確認」は別の要件です。読み取りアプリで保存した画像は犯収法上の本人確認書類には該当しません
  • マイナ免許証はマイナンバーカードそのものです。裏面の個人番号を撮らせない・保存しない設計が前提になります

いま何人が持っているのか。3つの保有パターンを押さえる

マイナンバーカードと運転免許証の一体化、いわゆるマイナ免許証は2025年3月24日に全国で運用が始まりました。事業者の現場で押さえるべきなのは、免許保有者が次の3つの状態に分かれたという事実です。

保有パターン現場での提示物事業者側の確認手段
マイナ免許証のみマイナンバーカード1枚ICチップ読み取りが必須
マイナ免許証+従来免許証(2枚持ち)どちらでも提示可能従来免許証を提示してもらえば従来どおり
従来免許証のみ従来免許証従来どおり

警察庁の統計によれば、2026年6月末時点の保有者は約357万人、そのうち「マイナ免許証のみ」が約100万人です。残る約257万人は2枚持ちということになります。

この数字の読み方が重要です。当面の現場運用は「従来免許証があればそれで確認、なければ読み取り」という分岐で回せます。しかし「マイナ免許証のみ」の約100万人は、従来免許証をそもそも持っていません。この層に対して「免許証のコピーをください」と言っても、出せるものがないのです。そして更新のたびに一体化を選ぶ人が増える以上、この比率は今後も上がっていきます。「まだ数が少ないから」と運用整備を先送りすると、対応できない顧客・応募者を機会損失として取りこぼすことになります。

券面を見ても何も分からない、という構造変化

従来の免許確認は、突き詰めれば「券面を読む」作業でした。氏名・住所・有効期限・免許の種類・条件(眼鏡等)が、すべてカードの表面に印字されていたからです。

マイナ免許証ではこの前提が崩れます。

  • 券面に免許情報は一切記載されません。免許の種類・有効期限・条件は、ICチップの中にしか存在しません(警察庁FAQ
  • ICチップに記録されるのは、マイナ免許証の番号、有効期間の末日、免許の種類、免許の条件、顔写真(モノクロ)などです。違反情報は記録されません
  • 読み取りには、本人が一体化の手続き時に設定した**4桁の「マイナ免許証用暗証番号」**の入力が必要です。10回連続で誤入力するとロックがかかり、解除は窓口対応になります

つまり事業者の免許確認は、「こちらが見て確かめる」業務から「本人の協力を得てICチップを読む」業務へ性質が変わります。この違いは現場のオペレーション設計に直接効きます。受付でカードを預かって裏でコピーを取る、という流れは使えません。本人が目の前にいて、本人が暗証番号を入力する必要があるからです。暗証番号を忘れている人、ロックがかかってしまった人への案内も、受付マニュアルに書いておく必要があります。

なお、この「券面ではなくICチップを読む」という方向転換は、マイナ免許証に限った話ではありません。本人確認の世界全体が同じ方向へ動いており、その全体像はeKYC完全マップ2026にまとめています。

確認手段は実質3つ

1. 警察庁「マイナ免許証読み取りアプリ」

実務の中心になるのは、警察庁が無料配布する公式の読み取りアプリです。iOS、Android、Windows、macOSに対応しています。

重要なのは、警察庁がこのアプリの事業者利用を明示している点です。FAQには「レンタカー事業者等が顧客の免許情報を確認することができます」と書かれています。グレーゾーンではなく、想定された使い方だということです。

  • 本人が4桁の暗証番号を入力してICチップを読み取ると、免許情報が従来の免許証と同じデザインで画面に表示され、画像として保存したり印字したりできます
  • 雇用時の免許確認についても、警察庁はFAQで「写しの保管に代えて、読み取った免許情報を画像保存・スクリーンショット・印字」する運用を案内しています
  • オフラインでの読み取りが可能で、読み取った情報が端末の外に送信されることはありません
  • PC版は、機種によって外付けのICカードリーダーが必要です

現場に導入するときの実務的な論点は、「誰の端末で読むか」です。顧客のスマートフォンに読み取らせて画面を見せてもらうのか、店舗のタブレットを渡して本人に暗証番号を入力してもらうのか。後者なら店舗側で画像保存・印字までを完結できますが、暗証番号を入力する画面を店員が覗き込まない配置にする、といった配慮が必要になります。

2. 本人がマイナポータルで表示する画面を確認する

本人が事前にマイナポータル連携の手続きを済ませていれば、スマートフォンの画面に免許情報を表示して提示できます。読み取り機器が不要なので、窓口でその場の資格確認を行いたい場合に向いています。

ただし、これは「本人が事前手続きをしていれば」という条件つきです。全員がやっているとは限らないため、これ単独を確認手段にすることはできません。読み取りアプリとの併用が前提になります。

3. 2枚持ちの人には従来免許証を出してもらう

約257万人いる2枚持ちの人は、従来免許証を提示してもらえば今までどおりの確認で済みます。現実的な現場運用は、当面「従来免許証があればそれ、なければ読み取りアプリ」の分岐で組むのが素直です。

実務で間違えやすい4つの論点

受け入れ可否は事業者が決めることになっている

警察庁のFAQも「各事業者のサービスでの利用可否は各事業者に確認を」という立て付けです。つまり、マイナ免許証をどう受け入れるかは事業者側が決めて明文化しなければなりません。

実際の運用例として、KINTOは「マイナ免許証のみ」の顧客に対し、カード表面画像と読み取りアプリのスクリーンショットの提出を求める運用を公開しています。カード表面で本人の顔と氏名を、アプリのスクリーンショットで免許情報を確認する、という二段構えです。

自社のフローを決めるとき、最初に答えを出すべきなのは次の問いです。「マイナ免許証のみの顧客が来たとき、何を提出してもらえば確認完了とするのか」。ここが決まっていないと、現場が個別判断で対応することになり、確認の質がばらつきます。

裏面(マイナンバー12桁)は絶対に扱わない

見落とされがちですが、マイナ免許証はマイナンバーカードそのものです。したがって、個人番号を含む裏面の取り扱いには番号法の制約がかかります。個人番号の記録や裏面の写しの取得は、法令で定められた事務以外では認められません

カード表面の画像を預かる運用を採る場合でも、「裏面は撮らせない・受け取らない・保存しない」をフローとシステムの両方に落とし込む必要があります。顧客に画像をアップロードしてもらう仕組みなら、誤って裏面を送られた場合の削除手順まで含めて設計しておくべきです。「うっかり集めてしまった」は、番号法の世界では言い訳になりません。

「免許の資格確認」と「犯収法の本人確認」はまったく別の要件

ここが最大の落とし穴です。警察庁は、読み取りアプリで保存した免許情報の画像は犯収法上の本人確認書類には該当しないと明言しています。

整理するとこうなります。

目的確認するもの手段
免許の資格確認運転できる資格があるかマイナ免許証のIC読み取り、または従来免許証
犯収法の本人確認取引相手が誰か(本人特定事項)マイナンバーカードとしての確認(IC読み取り・JPKI)

同じ1枚のカードを使っていても、確認している対象が違います。レンタカー事業者が犯収法の特定事業者に当たる場合など、両方の要件がかかる業務では、それぞれを別のステップとして設計してください。犯収法側については2027年4月以降はIC読み取り・JPKIが原則となる方向で改正が進んでおり、免許情報の画像を保存していても本人確認を満たしたことにはなりません。自社にどの本人確認義務がかかるのかを整理したい場合はマイナンバーカードを使った本人確認の選択肢も参考にしてください。

スマホ搭載のマイナンバーカードには免許情報が載らない

マイナンバーカードのスマートフォン搭載が広がっていますが、免許情報はスマホ搭載カードには記録されません。「スマホにマイナンバーカードが入っているから免許確認もそれでできる」という誤解が現場で起きやすいポイントです。免許確認については、カード現物の読み取りが前提になります。

システム開発の観点。どこまで自社で作れるか

警察庁はマイナ免許証の技術仕様(仕様書V10)を通達として公開しています。つまり、独自の読み取りシステムを開発することは制度上想定されています。警察庁のページには読み取り動作試験に関する相談窓口の案内もあり、自社アプリや業務システムにマイナ免許証の読み取りを組み込む道は開かれています。

一方で、事業者向けに免許情報をオンラインで照会できるAPIのような仕組みは、一次情報の範囲では確認できませんでした。「顧客の免許番号を投げれば有効性が返ってくる」といったサーバー間の照会は、現時点では前提にできません。

したがって、現実的なシステム化の範囲はこうなります。

  • できること: 店頭・現場でICチップを読み取り、読み取った免許情報を自社の業務システムに記録する
  • 前提にできないこと: オンラインでの免許情報照会、本人が同席しない状態での確認
  • 判断すべきこと: 警察庁の公式アプリで運用するか、自社アプリに読み取り機能を組み込むか

公式アプリで足りるのは、読み取り結果を人が見て確認し、画像や印字を保管すれば済む業務です。自社開発を検討する価値があるのは、読み取り結果を業務システムのマスタと自動照合したい、貸出記録や従業員台帳に構造化データとして紐づけたい、といった要件がある場合です。読み取り自体は公式アプリで行い、結果の画像を業務システムに添付する折衷案も、初期コストを抑える現実解になります。

発注前・運用設計前のチェックリスト

現場フローとシステム要件を固める前に、次の項目に答えを出しておくと検討が早く進みます。

  • 自社の業務で「マイナ免許証のみ」の顧客・応募者にどこまで対応するかを決めたか(受け入れる/従来免許証を求める)
  • 受け入れる場合、何を提出・提示してもらえば確認完了とするかを明文化したか
  • 確認は誰の端末で行うか(顧客の端末/自社の端末)を決めたか。暗証番号入力時の目隠し配慮を含めたか
  • 読み取り結果の保存形態(画像・印字・構造化データ)と保存期間を決めたか
  • 裏面(個人番号)を撮らせない・保存しない仕組みを、フローとシステムの両方に入れたか
  • 自社の業務に犯収法の本人確認義務がかかるかを整理し、免許の資格確認と分けて設計したか
  • 暗証番号を忘れた人・ロックがかかった人への案内を受付マニュアルに書いたか
  • 現場端末(PC版を使う場合)のICカードリーダー対応状況を確認したか
  • 公式アプリ運用と自社システム組み込みの費用対効果を比較したか

本人確認まわりの記事をどの順で読めば全体像がつかめるかはeKYC記事の読み方ガイドにまとめてあります。

まとめ

  • マイナ免許証は券面に免許情報がなく、目視とコピーによる確認は成立しません。確認は本人の4桁暗証番号によるICチップ読み取りへ変わります
  • 実務の中心は警察庁の無料読み取りアプリです。レンタカー等の事業者利用と雇用時確認への利用を、警察庁がFAQで明示しています
  • 2026年6月末時点で保有者は約357万人、うち「マイナ免許証のみ」が約100万人。従来免許証を持たない顧客への対応は先送りできません
  • 受け入れフローは事業者判断です。マイナンバー裏面を扱わない設計と、「免許の資格確認」と「犯収法の本人確認」の切り分けが設計の勘所になります
  • 技術仕様は公開されており独自の読み取り開発も可能ですが、オンライン照会APIは確認できません。現場での読み取りを前提にシステムを組んでください

よくある質問

Q. マイナ免許証は券面を見れば免許の種類が分かりますか?

分かりません。マイナ免許証は券面に免許情報が一切記載されず、免許の種類・有効期限・条件はICチップの中だけに記録されています。確認するには、本人が4桁のマイナ免許証用暗証番号を入力してICチップを読み取る必要があります。券面のコピーを取っても免許の確認にはなりません。

Q. レンタカー事業者が顧客のマイナ免許証を確認する方法は?

警察庁が無料配布する「マイナ免許証読み取りアプリ」を使うのが実務の中心です。警察庁はFAQで「レンタカー事業者等が顧客の免許情報を確認することができます」と事業者利用を明示しています。本人が4桁の暗証番号を入力して読み取ると、従来の免許証と同じデザインで免許情報が表示され、画像保存や印字ができます。本人がマイナポータルで表示する画面を確認する方法もあります。

Q. 雇用時の免許確認で、免許証の写しの代わりに何を保管すればよいですか?

警察庁はFAQで、写しの保管に代えて、読み取りアプリで読み取った免許情報を画像保存・スクリーンショット・印字する運用を案内しています。ただし保存するのは免許情報の表示画面であり、マイナンバーカード裏面の個人番号を含む写しを取得・保管することはできません。

Q. 読み取りアプリで保存した画像は犯収法の本人確認書類になりますか?

なりません。警察庁は、読み取りアプリで保存した免許情報の画像は犯収法上の本人確認書類に該当しないと明言しています。「免許の資格確認」と「犯収法の本人確認」は別の要件です。犯収法対応の本人確認は、マイナンバーカードとしての確認(IC読み取り・JPKI)で別途設計する必要があります。

Q. マイナ免許証を受け入れるかどうかは事業者が決めてよいのですか?

はい。警察庁のFAQも各事業者のサービスでの利用可否は各事業者に確認するよう案内しており、受け入れ方は事業者が決めて明文化する必要があります。実例として、KINTOは「マイナ免許証のみ」の顧客にカード表面画像と読み取りアプリのスクリーンショットの提出を求める運用を公開しています。

Q. スマホに搭載したマイナンバーカードで免許確認はできますか?

できません。マイナンバーカードのスマートフォン搭載は進んでいますが、免許情報はスマホ搭載カードには記録されません。マイナ免許証の確認は、カード現物のICチップを読み取ることが前提になります。

Q. 自社システムにマイナ免許証の読み取り機能を組み込めますか?

組み込めます。警察庁がマイナ免許証の技術仕様(仕様書V10)を通達として公開しており、独自の読み取りシステム開発は制度上想定されています。読み取り動作試験の相談窓口の案内もあります。ただし、事業者向けの免許情報オンライン照会APIのような仕組みは一次情報では確認できないため、現場でのICチップ読み取りと自社業務システムへの記録という範囲で設計するのが現実的です。

主な参考資料: 警察庁 マイナンバーカードと運転免許証の一体化警察庁 マイナ免許証FAQ警察庁 FAQ(事業者による確認)警察庁 FAQ(雇用時の確認)マイナ免許証読み取りアプリ警察庁 マイナ免許証 技術仕様書V10(通達)デジタル庁 マイナ免許証

TodoONada株式会社では、マイナンバーカード認証(JPKI・eKYC)を組み込んだWebサービス・スマホアプリの受託開発を行っています。マイナ免許証の読み取りを含む本人確認業務のシステム化では、方式選定(JPKI・IC読取り・画像方式)から開発・運用までワンストップで支援し、犯収法など業種ごとの確認要件の整理もあわせて行います。料金の目安は認証機能組込みプラン150万円〜、認証込みアプリ開発プラン400万円〜、大規模・個別要件は1,000万円〜です。「公式アプリ運用で足りるのか、自社システムに組み込むべきか」という確認フロー設計の壁打ちからでも構いません。マイナンバーシステム導入支援またはお問い合わせからお気軽にご相談ください。


この記事に関連するサービス

TodoONada株式会社では、マイナンバーカード認証を組み込んだシステム開発を行っています。

導入・開発のご相談はお問い合わせからお気軽にどうぞ。検討段階のご相談も歓迎です。

出典・参照

技術ブログ一覧へ戻る