マイナンバーカードのスマホ搭載で本人確認はどう変わるか。事業者視点の整理
更新(2026年8月23日): 本文中の「デジタル認証アプリ」は名称が「デジタル認証サービス」に変わり、マイナンバーカード関連アプリは2026年8月25日に新アプリ「マイナアプリ」へ統合される予定です。本文は執筆時点の名称のまま残しています。
2025年6月24日、iPhoneでマイナンバーカード機能が使えるようになりました。Androidは2023年5月から先行しており、これで主要スマホの両OSで「カードを持ち歩かずスマホだけ」という状態が揃いました。Apple Walletの身分証機能が米国外で使われるのはこれが初めてで、一般向けの話題性も十分でした。
利用者向けの解説記事は数多く出ましたが、本記事は視点を変えて「本人確認を提供する事業者側」への影響を整理します。結論を先に述べると、スマホ搭載は単なるUX改善ではなく、本人確認の法的な方式が1つ増えたという話です。eKYCを提供中・導入検討中の事業会社の責任者が、自社サービスで対応すべきか、どの経路で対応するかを判断できる材料をまとめます。
この記事の要点
- マイナンバーカードのスマホ搭載は、Android(2023年5月)に続きiPhone(2025年6月24日)で両OSが揃いました。カードもPINも不要で、生体認証だけで本人確認が完結します
- iPhone対応と同日の犯収法施行規則改正で、スマホ搭載の記録を使う本人確認が「ル方式」として正式に追加されました
- 2027年4月に画像送信型(ホ方式)が廃止された後は、カードをNFCで読むJPKI(カ方式)とスマホ搭載のル方式が、オンライン本人確認の2本柱になります
- 事業者側には、離脱率改善という利点の一方で、証明書2系統の管理・非対応端末ユーザーの代替経路・認定プログラム要件という設計論点が加わります
何が起きたのか: 電子証明書がスマホの中に入った
スマホ搭載(スマホ用電子証明書)は、マイナンバーカードのICチップに格納されている電子証明書と同等の機能を、スマホのセキュア領域に発行する仕組みです。事実関係を整理します。
- Android: 2023年5月から利用可能。おサイフケータイ等のセキュア領域に搭載します
- iPhone: 2025年6月24日から利用可能。Apple Walletに搭載します(iOS 18.5以降、iPhone XS以降)
- 利用時はカードもPINも不要で、Face ID / Touch IDなどの生体認証で完結します
- マイナポータルへのログイン、コンビニ交付などが「スマホだけ」でできます
事業者側の視点で最も重要なのは、スマホ用電子証明書は、カードの電子証明書とは別に発行される「別の証明書」だという点です。同じ人に「カードの証明書」と「スマホの証明書」の2系統が併存します。この事実が、後述する設計論点の起点になります。
法的な位置づけ: 「ル方式」という新しい本人確認方式
iPhone対応と同じ2025年6月24日に、犯罪収益移転防止法の施行規則も改正され、スマホ搭載の記録(法令上は「カード代替電磁的記録」)を使う本人確認が「ル方式」として正式に追加されました。
- ル方式とは、スマホに搭載されたカード代替電磁的記録から、氏名・住所・生年月日・顔写真の情報を送信して確認する方式です
- 送信・確認には、内閣総理大臣の認定を受けたプログラムを使う建て付けです
- ユーザー体験としては「カードをかざす」動作すら不要で、スマホの生体認証だけで本人確認が完結します
2027年4月の改正で画像送信型(ホ方式)が廃止された後の世界では、「カードをNFCで読むJPKI(カ方式)」と「スマホ搭載のル方式」がオンライン本人確認の2本柱になります。ホ・ヘ・ト・ル・カ各方式の内容と廃止スケジュールはeKYCの方式一覧に、2027年施行後に使える方式と移行手順は2027年施行後のeKYC方式一覧と移行チェックリストにまとめています。画像方式とJPKIの本質的な違いはeKYCとJPKIの比較も参照してください。
事業者への影響: 3つの実務論点
論点1: 離脱率の改善が見込める一方、対応は追加開発になる
カード読み取り方式の最大の離脱要因は「カードが手元にない」「NFC読み取りがうまくいかない」「PINを忘れた」の3つでした。ル方式はこの3つをすべて回避できます。本人確認フローの離脱がコンバージョンに直結する事業では、無視できない改善余地です。
一方で、対応はただでは手に入りません。eKYCベンダー各社も2025年後半からル方式対応を始めており、対応済みベンダーを利用していればプラン追加で載せられる可能性があります。自社実装している場合は、認定プログラム要件への対応を含めた追加開発になります。
論点2: 証明書が2系統になる前提でアカウント設計を見直す
同一人物がカードとスマホの両方の証明書を持ち、それぞれが別々に失効し得ます。たとえばスマホの機種変更では、スマホ用証明書の再発行が発生します。
- 「前回はスマホで認証した人が、今回はカードで来る」
- 「カード側は有効だが、スマホ側だけ失効している」
こうした状態の組み合わせを、アカウント紐付けとエラーメッセージの設計に織り込む必要があります。なお、マイナンバーカードの電子証明書には署名用と利用者証明用の2種類があり、どちらを使うかで開発の中身も変わります。証明書の失効を検知した後にアカウントをどう継続させるかは、証明書失効とアカウント継続の設計で詳しく扱っています。
論点3: 対応端末の境界線は残り続ける
スマホ搭載はiPhone XS以降・対応Android機種が前提で、非対応端末のユーザーやカード未取得のユーザーは残ります。ル方式を導入しても、カード読み取り(カ方式・ヘ方式)や窓口などの代替経路は引き続き必要です。「スマホ搭載対応でカード読み取りを廃止できる」のではなく、「本人確認の経路が1つ増える」と捉えるのが正確です。

導入経路: どこから手を付けるか
自社の現状に応じて、確認の起点は次のように変わります。
| 現状 | 最初にやること |
|---|---|
| eKYCベンダー利用中 | ベンダーのル方式対応状況とプラン条件を確認する(最短ルート) |
| デジタル認証アプリ連携 | アプリ側がスマホ用電子証明書に対応しているため、事業者側の実装変更なしでスマホ搭載ユーザーを受けられる。連携には利用申請・審査への対応が必要 |
| 自社実装(プラットフォーム事業者と直接契約) | 対応方式にル方式が含まれるか、認定プログラムの提供形態を事業者に確認する |
マイナンバーカード本人確認を自社サービスへ組み込む選択肢は、JPKIプラットフォーム事業者経由・eKYC SaaS・デジタル認証アプリ・自社での主務大臣認定と複数あり、費用と開発範囲が大きく異なります。方式選定を含めた全体像の整理はマイナンバーシステム導入支援でご案内しています。eKYC全体の地図はeKYC完全マップ2026も参照してください。
対応判断のチェックリスト
ル方式対応を検討する際、社内で先に埋めておくべき項目です。
- 現在の本人確認フローの離脱率と、離脱要因(カード非所持・NFC失敗・PIN忘れ)の内訳を把握している
- 利用中のeKYCベンダー(または連携中のサービス)のル方式対応状況・追加費用を確認した
- カード証明書とスマホ証明書の2系統を、アカウント紐付け設計でどう扱うか方針がある
- スマホ側証明書だけが失効しているケースのエラーメッセージ・導線を設計した
- 非対応端末・カード未取得ユーザー向けの代替経路(カード読み取り・郵送・窓口)を維持する計画がある
- 2027年4月のホ方式廃止スケジュールと合わせた移行計画になっている
まとめ
- マイナンバーカードのスマホ搭載は、Android(2023年5月)に続きiPhone(2025年6月24日)で両OSが揃いました。生体認証だけで本人確認が完結します
- iPhone対応と同日の犯収法施行規則改正で「ル方式」として法的にも正式な本人確認方式になりました。2027年以降はカ方式(JPKI)と並ぶ2本柱です
- スマホ用電子証明書はカードの証明書とは別の証明書で、同一人物に2系統が併存し、別々に失効し得ます
- 事業者側は、離脱率改善が見込める一方で、証明書2系統の管理・非対応ユーザーの代替経路・認定プログラム要件という設計論点が増えます
- 最初の一歩は、利用中のeKYCベンダーまたはデジタル認証アプリのル方式対応状況の確認です
よくある質問
Q. マイナンバーカードのスマホ搭載はいつからiPhoneで使えるようになりましたか?
2025年6月24日からです。iOS 18.5以降のiPhone XS以降の機種で、Apple Walletにマイナンバーカードを搭載できます。Androidは2023年5月から先行して利用可能で、おサイフケータイ等のセキュア領域に搭載します。これにより主要スマホの両OSで、カードを持ち歩かずスマホだけで本人確認やマイナポータルへのログインができる状態が揃いました。
Q. ル方式とは何ですか?
2025年6月24日の犯罪収益移転防止法施行規則の改正で追加された、スマホ搭載の記録(法令上「カード代替電磁的記録」)を使うオンライン本人確認の方式です。スマホに搭載された記録から氏名・住所・生年月日・顔写真の情報を送信して確認し、送信・確認には内閣総理大臣の認定を受けたプログラムを使います。ユーザーはカードをかざす操作すら不要で、スマホの生体認証だけで本人確認が完結します。
Q. スマホ用電子証明書とカードの電子証明書は同じものですか?
別のものです。スマホ用電子証明書は、カードのICチップの電子証明書と同等の機能を持ちますが、カードとは別に発行される別の証明書です。同じ人に「カードの証明書」と「スマホの証明書」の2系統が併存し、それぞれ別々に失効し得ます。たとえばスマホの機種変更ではスマホ用証明書の再発行が発生するため、事業者側は2系統前提のアカウント設計が必要です。
Q. スマホ搭載に対応すればカード読み取りは廃止できますか?
できません。スマホ搭載はiPhone XS以降・対応Android機種が前提で、非対応端末のユーザーやカード未取得のユーザーが残るためです。ル方式を導入しても、カード読み取り(カ方式・ヘ方式)や窓口などの代替経路は引き続き必要です。「経路が1つ増える」と捉えるのが正確です。
Q. 事業者がスマホ搭載(ル方式)に対応するにはどうすればよいですか?
現状によって最短ルートが変わります。eKYCベンダー利用中なら、ベンダーのル方式対応状況とプラン条件の確認が最短です。デジタル認証アプリ(現・デジタル認証サービス)と連携していれば、アプリ側がスマホ用電子証明書に対応しているため事業者側の実装変更なしで受けられます。自社実装の場合は、認定プログラムの提供形態をプラットフォーム事業者に確認したうえでの追加開発になります。
Q. 2027年の法改正で本人確認方式はどうなりますか?
2027年4月の改正で、免許証などの画像送信で確認する方式(ホ方式)が廃止されます。その後のオンライン本人確認は、マイナンバーカードをNFCで読み取るJPKI(カ方式)と、スマホ搭載のル方式が2本柱になります。画像方式に依存している事業者は、この2方式への移行計画が必要です。
主な参考資料: デジタル庁 iPhoneのマイナンバーカード、Apple ニュースルーム、TRUSTDOCK 改正犯収法の本人確認手法解説
TodoONada株式会社は、マイナンバーカード認証(JPKI・eKYC)を組み込んだWebサービス・スマホアプリの受託開発を行っています。方式選定(JPKI・IC読取り・画像方式)から開発・運用までワンストップで支援するほか、デジタル庁「デジタル認証アプリ」の利用申請・審査対応の伴走支援(書類作成から指摘対応まで)にも対応しています。「うちのeKYCフローにスマホ搭載をどう足すか」という設計段階からのご相談も可能です。料金の目安は認証機能組込みプラン150万円〜、認証込みアプリ開発プラン400万円〜です。詳しくはマイナンバーシステム導入支援をご覧ください。
この記事に関連するサービス
TodoONada株式会社では、マイナンバーカード認証を組み込んだシステム開発を行っています。
- マイナンバーシステム導入支援 — JPKI・eKYC対応の本人確認をワンストップで
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出典・参照
- デジタル庁 iPhoneのマイナンバーカード (2026年7月6日確認)
- Apple ニュースルーム(iPhoneのマイナンバーカード) (2026年7月6日確認)
- TRUSTDOCK 改正犯収法の本人確認手法解説 (2026年7月6日確認)