古物商の本人確認。非対面買取とeKYCの整理
宅配買取・オンライン買取のサービスを立ち上げる、あるいは既存の買取フローをシステム化しようとしている事業者に向けて、古物営業法が求める「相手方の確認」を整理します。買取ビジネスの本人確認は、金融機関のeKYCとは根拠法も方法も所管も異なり、さらに扱う品目によって複数の法律が同時に刺さります。「何の法律の確認をしているのか」を発注前に整理しておかないと、要件の抜けや二重投資につながります。この記事はその整理のための一枚です。法令確認日は2026年8月23日です。
この記事の要点
- 古物商の「相手方の確認」は犯収法とは別の法律(古物営業法)の義務です。根拠も方法も所管(公安委員会)も異なります
- 非対面買取で使える確認方法は国家公安委員会規則で列挙されており、eKYC型(書類画像+容貌)や電子署名(JPKI)型が含まれます
- 原則1万円以上の取引が確認対象ですが、例外品目は金額を問わず対象です。2025年10月からは金属製品も少額対象に追加されています
- 中古スマホや貴金属を扱うと、携帯電話不正利用防止法や犯収法が重なって適用されます。法律ごとに画面を作らず、共通基盤+判定ロジックで設計するのが効率的です
古物営業法の「相手方の確認」は何のための義務か
古物商(中古品の買取・販売事業者)は、盗品の流通を防ぐという目的のもと、古物を買い受ける際に相手方の真偽を確認する義務を負います(古物営業法15条)。金融機関に課される犯収法の取引時確認と一見似ていますが、別の法律・別の目的による確認です。基本要素は次のとおりです。
- 対象: 古物の買受け・交換等。原則として1万円以上の取引が対象ですが、バイク・ゲームソフト・CD/DVD・書籍などの例外品目は1万円未満でも確認義務があります。2025年10月からは金属製品も少額対象に追加されました
- 記録: 取引の帳簿記録と保存(原則3年)
- 所管: 都道府県公安委員会(許可制)。制度全体は警察庁が担います
見落とされやすいのは、「うちは金融機関ではないから本人確認は関係ない」という理解のまま宅配買取サイトを構築してしまうケースです。犯収法の特定事業者に該当しなくても、古物商である限りこの確認義務は発生します。業種ごとにどの法律の本人確認義務が課されるかという横断的な視点は、eKYC・本人確認の全体地図でも整理しています。
非対面買取で使える確認方法の系統
対面の買取であれば身分証明書の提示を受ける方法が基本ですが、宅配買取・オンライン買取のような非対面取引では、国家公安委員会規則が確認方法を列挙しています。代表的な系統を実装の観点とともに整理します。
| 系統 | 概要 | 実装の要点 |
|---|---|---|
| 電子署名型 | 相手方に電子署名(公的個人認証=マイナンバーカードの署名用証明書を含む)を行わせる | JPKI連携。犯収法カ方式と同じ技術要素が使えます |
| eKYC型 | 本人確認書類の画像+本人の容貌の画像をソフトウェアで送信させる | 犯収法の現行ホ方式に相当する構成です |
| 書類送付+住所到達型 | 住民票の写し等の送付を受け、本人限定受取郵便や転送しない方法で到達を確認する | 郵送オペレーションが必要です |
| 口座振込併用型 | 本人確認書類の写し等と、本人名義口座への代金振込を組み合わせる | 買取代金の支払い設計と一体化します |
どの系統を選ぶかは、買取単価・取引量・ユーザー層・支払いフローによって変わります。各方式の特性を横並びで比較する視点はeKYC方式の一覧と選び方が参考になります。
ここで一つ、設計判断に直結する注意点があります。古物営業法のeKYC型(画像方式)は、犯収法の2027年改正で廃止される「ホ方式」とは別の法令上の方法です。 2026年8月時点で、古物営業法側の画像方式が廃止されると確定した事実は確認していません。ただし、偽造書類対策として画像方式を締める流れは犯収法・携帯電話不正利用防止法で連続しています。これから買取システムを新規に構築するなら、IC読み取り・JPKI対応を前提にした設計にしておく方が長持ちします。犯収法側の方式変更の全体像は2027年施行後のeKYC方式一覧と移行チェックリストを、JPKIを軸にした設計の考え方はeKYCとJPKIの違いを参照してください。
品目によって法律が重なる: 買取フローに刺さる根拠法
古物商の実務でややこしいのは、扱う品目や支払い方法によって、古物営業法以外の本人確認法制が重なって適用されることです。
- 中古スマホ・SIM付き端末: 古物営業法に加えて、回線契約・譲渡が絡む場合は携帯電話不正利用防止法の確認義務が関わります
- 貴金属・宝石の買取: 古物営業法に加えて、貴金属等取扱事業者として200万円超の現金取引等では犯収法の取引時確認が必要です
- 金属スクラップ: 金属盗対策法(2026年6月全面施行)の確認・記録義務が適用されます
- 買取代金をポイントや資金移動で支払う場合: 資金決済法・犯収法の検討が追加で必要になります
つまり「1つの買取フローに、確認の根拠法が2〜3本刺さる」ことが普通に起きます。ここで法律ごとに別々の画面・別々の確認フローを作ると、開発費も運用負荷も膨らみます。効率的な設計は、共通の本人確認基盤(IC読み取り/JPKI+記録保存)を1つ構築し、品目・金額の判定ロジックで確認レベルと記録項目を切り替える形です。この「共通基盤を1つ持つ」構成は、確認義務が増減する法改正への耐性という点でも有利です。基盤を自社開発するかベンダー製品を使うかの判断はeKYCの費用相場と自社開発・ベンダー利用の分岐点で整理しています。
記録・照会対応まで含めてシステム要件になる
古物営業法の義務は確認して終わりではなく、取引の帳簿記録と原則3年の保存、そして警察(公安委員会)からの照会・立入りへの対応まで含みます。システム要件に落とすと次のようになります。
- 帳簿に必要な項目を取引データとして正規化して保持すること
- 本人確認の証跡(どの方法で・いつ・何を確認したか)を取引記録と紐付けて保存すること
- 照会があったときに、該当取引の記録を速やかに抽出・提示できる検索性を備えること
とくに非対面買取では、確認プロセスがすべてシステム上で完結するため、「確認したことを後から証明できるか」がそのまま法令遵守の証明になります。記録の設計を後回しにして買取フローだけ先に作ると、この部分の作り直しが発生しがちです。
発注前チェックリスト
買取システムの構築・改修を発注する前に、次の項目を確認してください。
- 取扱品目と金額帯から、確認義務が発生する取引を判定するロジックを仕様化したか(1万円ルールと例外品目、2025年10月の金属追加)
- 非対面の確認方法を規則のどの号に依拠するか決め、その要件(書類の種類・到達確認・振込先名義一致など)を満たすフローになっているか
- 帳簿(取引記録)の項目と3年保存を満たすデータ設計になっているか
- 本人確認の証跡を取引記録と紐付けて保存し、後から証明できる形になっているか
- 品目によって重なる法律(携帯電話不正利用防止法・犯収法・金属盗対策法)の確認を、同じ基盤で切り替えられる設計か
- 警察(公安委員会)からの照会・立入りに、記録をすぐ出せる運用になっているか
- 新規構築の場合、IC読み取り・JPKI対応を前提にした設計になっているか
まとめ
- 古物商の相手方確認は古物営業法(15条)の義務です。犯収法とは根拠も方法も所管も異なります
- 原則1万円以上が対象ですが、例外品目は金額を問わず対象です。2025年10月の金属製品追加まで含めて判定ロジックを仕様化してください
- 非対面の確認方法は国家公安委員会規則で列挙されており、電子署名(JPKI)型・eKYC型・郵送型・振込併用型があります
- 古物営業法の画像方式は犯収法の2027年廃止対象とは別の方法ですが、画像方式を締める流れは業法をまたいで連続しています。新規構築ならIC・JPKI前提の設計が長持ちします
- 品目次第で携帯電話不正利用防止法・犯収法・金属盗対策法が重なります。法律ごとに作らず、共通基盤+判定ロジックで設計してください
- 帳簿記録の3年保存と照会対応まで含めてシステム要件です
よくある質問
Q. 古物商の買取ではいくらから本人確認が必要ですか?
原則として1万円以上の買受け・交換等が確認義務の対象です。ただしバイク・ゲームソフト・CD/DVD・書籍などの例外品目は1万円未満でも確認義務があり、2025年10月からは金属製品も少額の対象に追加されています。取扱品目と金額から確認要否を判定するロジックを、システム仕様として明文化しておくことが重要です。
Q. 宅配買取・オンライン買取ではどうやって本人確認をすればよいですか?
非対面の確認方法は国家公安委員会規則で列挙されています。代表的な系統は、電子署名型(マイナンバーカードの署名用証明書によるJPKIを含む)、eKYC型(本人確認書類の画像+容貌画像の送信)、書類送付+住所到達型(本人限定受取郵便等)、口座振込併用型(書類の写し+本人名義口座への振込)です。どの号に依拠するかを決め、その要件を満たすフローとして設計します。
Q. 古物商の本人確認と犯収法のeKYCは同じものですか?
別のものです。古物商の相手方確認は古物営業法(所管は都道府県公安委員会)の義務で、盗品流通の防止が目的です。犯収法の取引時確認とは根拠法・方法・所管が異なります。ただし技術要素には共通点があり、たとえば古物営業法の電子署名型は犯収法カ方式と同じJPKIの仕組みが使えます。
Q. 犯収法の2027年改正で古物商の画像方式も使えなくなりますか?
古物営業法のeKYC型(画像方式)は、犯収法の2027年改正で廃止される「ホ方式」とは別の法令上の方法であり、2026年8月時点で古物営業法側の画像方式が廃止されると確定した事実は確認していません。ただし偽造書類対策として画像方式を締める流れは犯収法・携帯電話不正利用防止法で連続しているため、新規に買取システムを構築するならIC読み取り・JPKI対応を前提にした設計が長持ちします。
Q. 中古スマホや貴金属の買取では追加の本人確認義務がありますか?
あります。中古スマホ・SIM付き端末は回線契約・譲渡が絡む場合に携帯電話不正利用防止法が、貴金属・宝石は貴金属等取扱事業者として200万円超の現金取引等で犯収法が、金属スクラップは金属盗対策法(2026年6月全面施行)が、それぞれ古物営業法に重なって適用されます。共通の本人確認基盤を1つ作り、品目・金額の判定で確認レベルを切り替える設計が効率的です。
Q. 古物商の取引記録はどのくらい保存する必要がありますか?
取引の帳簿記録は原則3年の保存が必要です。非対面買取では確認プロセスがシステム上で完結するため、どの方法で・いつ・何を確認したかという証跡を取引記録と紐付けて保存し、警察(公安委員会)からの照会・立入りに速やかに提示できる検索性まで含めてデータ設計することが求められます。
Q. 買取サービスの本人確認システム開発はどこに相談できますか?
複数の業法にまたがる判定ロジックを含む場合は、法令要件の整理から設計まで一体で相談できる開発会社が適しています。TodoONada株式会社では、古物営業法・犯収法・携帯電話不正利用防止法など業種ごとの本人確認要件の整理から、JPKI・IC読み取り対応のシステム開発までをマイナンバーシステム導入支援として提供しています。
主な参考資料: 警察庁 古物営業について、e-Gov 古物営業法、e-Gov 古物営業法施行規則
TodoONada株式会社では、マイナンバーカード認証(JPKI・eKYC)を組み込んだWebサービス・スマホアプリの受託開発を行っています。方式選定(JPKI・IC読み取り・画像方式)から開発・運用までワンストップで支援し、古物営業法・犯収法・携帯電話不正利用防止法など業種ごとの本人確認要件の整理から対応します。デジタル庁「デジタル認証アプリ」の利用申請・審査対応も書類作成から指摘対応まで伴走します。料金の目安は認証機能組込みプラン150万円〜、認証込みアプリ開発プラン400万円〜、大規模・個別要件は1,000万円〜です。買取サービスの確認フロー設計(複数業法の判定ロジックを含む)のご相談は、マイナンバーシステム導入支援またはお問い合わせからお寄せください。
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TodoONada株式会社では、マイナンバーカード認証を組み込んだシステム開発を行っています。
- マイナンバーシステム導入支援 — JPKI・eKYC対応の本人確認をワンストップで
導入・開発のご相談はお問い合わせからお気軽にどうぞ。検討段階のご相談も歓迎です。
出典・参照
- 警察庁 古物営業について (2026年8月23日確認)
- e-Gov 古物営業法 (2026年8月23日確認)
- e-Gov 古物営業法施行規則 (2026年8月23日確認)