eKYCサービスの選び方。料金より先に見る20項目

eKYCサービスの選び方。料金より先に見る20項目

eKYCサービスの選定を任されたとき、最初にやりがちなのが各社の料金表を並べることです。しかし料金表の単価だけで選ぶと、契約後に「その方式は別料金」「手動審査は従量加算」という後出しに遭い、総額が逆転します。本記事は、eKYCサービスの発注を検討している事業会社の担当者向けに、料金を当てはめる前に固めるべき確認項目を10分類・20項目のチェックリストとして整理します。確認日: 2026年8月23日。

個別ベンダーの評価はeKYCベンダー比較を開発者の目で読む、費用の構造と損益分岐はeKYC導入費用の相場がそれぞれ担当し、この記事は「何を確認すればよいか」に答えます。

この記事の要点

  • eKYCサービスの比較は「対応方式の○×」と単価だけでは決まりません。2027年改正・データ責任・運用まで含めた10分類20項目で見ます
  • 差が出やすいのは、顔照合精度の評価条件、API・Webhookの設計品質、データの保存責任、解約時の扱いといった「料金表に載らない項目」です
  • 未公開の項目は「非対応」ではなく「公開情報では確認できず」として扱い、RFPや商談で直接確認します
  • 20項目をそのまま質問状にして単価とセットで回答してもらうと、後出しの加算料金を防げます

料金表を起点にすると、なぜ選定を誤るのか

eKYCの料金は「1件あたり数十円〜数百円」のレンジに並ぶため、一見すると比較しやすく見えます。しかし単価の差は、実は確認方式・精度の閾値設定・手動審査の有無・データ保存の範囲の差でもあります。安い単価で契約した後に「JPKI方式は別料金」「手動審査は従量加算」「画像の保存は3か月まで」と判明すれば、総額はあっさり逆転します。

正しい順序は逆です。先に自社の要件を20項目で固め、そのうえで各社の料金を当てはめます。以下、10分類ごとにチェックリスト形式で示します。

分類1: 法令対応

  • (1) 対応方式: 現行のヘ・ト・カ方式と、2027年4月以降の新方式(IC+顔、JPKI)にいつ対応するか。移行プランが提示されているか
  • (2) 確認記録: 犯収法の確認記録に必要な項目が出力され、7年保存の要件を自社側で満たせる形式か

2027年4月施行予定の改正で使える方式は大きく変わります。移行対象の方式と手順は2027年施行後のeKYC方式一覧と移行チェックリストを参照してください。

分類2: JPKI

  • (3) 提供形態: プラットフォーム事業者として自社提供か、認定プラットフォームとの提携か。この違いで障害時・法対応時の責任分界が変わります
  • (4) 証明書の種類: 署名用証明書(本人確認)と利用者証明用証明書(当人認証)のどちらに対応し、失効確認をどの時点で行うか

JPKIという仕組み自体の理解が曖昧なまま選定に入ると質問の精度が落ちます。前提知識はeKYCとJPKIの違いで整理しています。

分類3: 書類確認

  • (5) 対応書類: マイナンバーカード以外のIC搭載書類(運転免許証・在留カード・旅券)にどこまで対応するか
  • (6) 確認の分解: OCR・券面真贋判定・IC真正性検証のどこまでを実装しているか。「OCR対応」の一言だけでは偽造対策になりません

分類4: 顔照合

  • (7) 精度の根拠: 照合精度を、評価データセット・閾値・条件付きで開示できるか。「精度99.9%」の一言だけなら追加確認が必要です
  • (8) なりすまし対策: PAD(ライブネス検知)の方式と、第三者評価(ISO/IEC 30107系の試験やFIDO認定)の有無

分類5: SDK・クライアント

  • (9) 対応環境: iOS/Android/Webの対応範囲と最低OSバージョン。自社ユーザー層の端末分布と合っているか
  • (10) NFC読み取りのUX: 読み取り失敗時のガイダンスとリトライ設計。デモを自分の端末で実際に試したか

分類6: API・連携

  • (11) 連携方式: 同期APIかWebhook通知か。Webhookの署名検証・再送仕様が文書化されているか
  • (12) セッション設計: 確認ステータス(処理中・手動審査中・承認・否認・期限切れ)がAPIで追跡でき、冪等に再取得できるか

分類7: 運用

  • (13) 審査時間とSLA: 自動判定の割合、手動審査の所要時間(営業時間外の扱いを含む)、SLAの有無
  • (14) 例外対応: 読み取り不能・照合不能時の代替フロー(再撮影・別方式への切替)を製品側で持っているか

運用フェーズで実際に何が起きるかは、eKYCが失敗する30パターンを突き合わせて確認すると、質問の抜けを防げます。

分類8: データの取り扱い

  • (15) 保存場所と期間: 画像・IC情報・照合結果をどこに何か月保存するか。国外保存やサブプロセッサの有無
  • (16) 削除と返却: 契約終了時のデータ返却・削除の手順と証明。保存期間経過後の自動削除があるか

分類9: セキュリティ

  • (17) 暗号化と鍵管理: 保存時・通信時の暗号化と鍵管理の方式。監査ログの提供範囲
  • (18) 認証・認定: ISMS等の認証、脆弱性診断の実施状況。認証名だけでなく適用範囲まで確認します

分類10: 契約・費用

  • (19) 費用の全体像: 初期費・月額最低料金・方式別単価・手動審査加算・保存費。自社の件数予測を当てはめた3年総額で比較する
  • (20) 出口条件: 解約予告期間、最低契約期間、乗り換え時のデータ移行支援

チェックリストの使い方: 3値評価と「確認できず」の扱い

実務では、この20項目を行、候補サービスを列にした比較表を作り、各セルを次の3値で埋めます。

評価意味
公開資料で確認公式サイト・公開ドキュメントに記載がある
商談で確認問い合わせ・商談で回答を得た
確認できず公開情報になく、まだ回答も得ていない

ポイントは、未公開の項目を勝手に「非対応」と判定しないことです。公開情報の充実度そのものもベンダーの姿勢として評価対象にはなりますが、事実の判定と混ぜると比較を誤ります。また、表には必ず調査日を付けてください。2027年対応のような時限項目は、四半期ごとの見直しが必要です。

RFPに落とす場合は、20項目をそのまま質問状にして、単価とセットで回答してもらう形が有効です。回答を単価と紐づけておくことで、契約後の後出し加算料金を防げます。見積もりの金額構造(初期+月額+従量)の読み方と損益分岐の考え方はeKYC導入費用の相場を参照してください。

まとめ

  • eKYC選定は、法令・JPKI・書類確認・顔照合・SDK・API・運用・データ・セキュリティ・契約の10分類20項目で見ます
  • 差が出るのは料金表に載らない項目です。精度の評価条件、Webhook仕様、データ保存責任、解約時の扱いは必ず確認してください
  • 未公開項目は「確認できず」として残し、商談・RFPで潰します。比較表には調査日を付け、時限項目は四半期ごとに見直します
  • 20項目を質問状化して単価とセットで回答を取ると、後出しの加算料金を防げます
  • eKYC全体の用語・方式・実装の見取り図が必要な場合はeKYC完全マップ2026から入るのが近道です

よくある質問

Q. eKYCサービスを比較するとき、何を確認すればよいですか?

料金表の前に、法令対応・JPKI・書類確認・顔照合・SDK・API連携・運用・データの取り扱い・セキュリティ・契約条件の10分類20項目を確認します。特に2027年4月以降の新方式への対応時期、確認記録の7年保存要件、顔照合精度の評価条件、解約時のデータの扱いは、料金表に載らないのに総額と運用を大きく左右します。

Q. eKYCサービスを料金だけで選ぶと何が問題ですか?

単価の差は確認方式・精度の閾値・手動審査の有無・データ保存範囲の差でもあるためです。安い単価で契約した後に「JPKI方式は別料金」「手動審査は従量加算」「保存は3か月まで」と判明すると総額が逆転します。先に要件を20項目で固めてから料金を当てはめる順序が安全です。

Q. 「精度99.9%」と書かれた顔照合はどう評価すればよいですか?

数字の一言だけでは評価できません。どの評価データセットで、どの閾値・条件で測定した数字かの開示を求めてください。あわせて、なりすまし対策(PAD/ライブネス検知)の方式と、ISO/IEC 30107系の試験やFIDO認定といった第三者評価の有無を確認します。

Q. 2027年の犯収法改正に向けてeKYCベンダーに何を確認すべきですか?

現行のヘ・ト・カ方式への対応に加えて、2027年4月以降の新方式(IC+顔、JPKI)への対応時期と移行プランが提示されているかを確認します。時限的な項目のため、比較表に調査日を付けて四半期ごとに見直すことをおすすめします。

Q. eKYCのデータ保存で確認すべきポイントは何ですか?

画像・IC情報・照合結果をどこに何か月保存するか、国外保存やサブプロセッサの有無、契約終了時のデータ返却・削除の手順と証明、保存期間経過後の自動削除の有無です。犯収法の確認記録を自社側で7年保存できる出力形式かどうかも、法令対応として必ず確認します。

Q. eKYC選定のRFPはどう作ればよいですか?

10分類20項目のチェックリストをそのまま質問状にして、各項目への回答を単価とセットで求める形が有効です。回答と単価を紐づけることで、契約後の後出し加算を防げます。回答が得られない項目は「非対応」ではなく「確認できず」として管理し、商談で潰していきます。

主な参考資料: 警察庁 2026年3月公表の改正Q&A(PDF)デジタル庁 公的個人認証サービス(JPKI)の導入案内ISO/IEC 30107-3:2023(PADの試験と報告)FIDO Face Verification Certification

TodoONada株式会社は、マイナンバーカード認証(JPKI・eKYC)を組み込んだWebサービス・スマホアプリの受託開発を行っています。この20項目を使ったRFPの作成支援やベンダー回答のレビュー、方式選定(JPKI・IC読取り・画像方式)から開発・運用までのワンストップ支援に加え、犯収法・携帯電話不正利用防止法など業種ごとの本人確認要件の整理からお手伝いしています。料金の目安は認証機能組込みプラン150万円〜、認証込みアプリ開発プラン400万円〜です。詳しくはマイナンバーシステム導入支援、ご相談はお問い合わせからどうぞ。


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出典・参照

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