マイナンバーカード認証の導入事例2026。銀行・証券・行政・電子契約で誰がどう使っているか

マイナンバーカード認証の導入事例2026。銀行・証券・行政・電子契約で誰がどう使っているか

「マイナンバーカードで本人確認」と言われても、実際にどこの会社が、何のために使っているのかが見えないと社内の判断材料になりません。稟議で「他社はどうしているのか」と聞かれて答えられなければ、話はそこで止まります。

本記事は、公的個人認証(JPKI)とデジタル認証アプリを実際に導入しているサービスを、業種と用途で整理したものです。発注者・事業会社の意思決定者が、自社の用途に近い事例を見つけて方式選定の当たりをつけられる状態を目指しています。結論を先に言うと、導入の中心は金融機関の口座開設で、デジタル庁の公式リストに載る事業者だけで**1,265社(2026年5月31日時点)**に達しています。そして事例は「カードを直接読むJPKI方式」と「デジタル認証アプリ経由の方式」の2系統に分かれます。

この記事の要点

  • デジタル庁の公式リストに載るJPKI導入事業者は1,265社(2026年5月31日時点)。中心は金融機関の口座開設です
  • 事例は「JPKI直接方式」と「デジタル認証アプリ方式」の2系統に分かれます。同じ「マイナンバーカード認証」でも事業者側の実装は別物です
  • 行政では、署名が必要な手続きは署名用電子証明書、ログイン相当の手続きは利用者証明用電子証明書という使い分けが定着しています
  • 電子契約・店頭窓口にも用途が広がっており、オンライン専用の技術ではありません
  • 導入の駆動力は法的義務です。義務のある業種から順に動いており、2027年4月の犯収法改正がさらに押し上げます

事例を読む前提: 2つの技術系統がある

導入事例を並べる前に、方式の違いを押さえておくと読みやすくなります。事例記事で同列に並んでいる企業でも、実際に作ったものは異なるからです。

  • JPKI直接方式: 利用者がスマホやカードリーダーでマイナンバーカードのICチップを読み取り、電子証明書を事業者(またはプラットフォーム事業者)が検証します。eKYCベンダーが提供してきた本人確認はこの系統です
  • デジタル認証アプリ方式: デジタル庁が2024年6月に提供開始したアプリを経由し、事業者は認証結果を受け取ります。事業者側の実装はOpenID Connectの標準的な連携になります

同じ「マイナンバーカード認証」でも、事業者から見た開発の中身は違います。前者はカード読み取りのUXとNFCの実装を自社側で抱えることになり、後者はアプリ側に読み取りを預けられます。この違い自体はeKYCとJPKIの違い。「eKYCが廃止される」という誤解を解くで解説しています。以下では、まず件数の多いJPKI方式の事例から見ていきます。

JPKI直接方式とデジタル認証アプリ方式の2系統を示す図

金融機関: 口座開設が最大の用途

デジタル庁のJPKI導入事業者リストを見ると、銀行・証券・カード・保険が大きな塊を占めています。

業種事業者(例)主な用途
銀行みずほ銀行、三井住友銀行口座開設時の本人確認
証券SMBC日興証券、楽天証券、野村證券口座開設時の本人確認
資金移動PayPay資金移動業の口座開設
クレジットカード楽天カード、三井住友カードカード申込時の本人確認
保険第一生命(オンライン本人確認)、日本生命・明治安田生命(マイナンバー収集)本人確認・番号収集

金融が先行する理由は明確で、犯罪収益移転防止法(犯収法)で本人確認が法的に義務付けられている業種だからです。従来の「本人確認書類の写しを郵送」に比べ、JPKIは書類の受領・審査コストを下げつつ、なりすましに強い。この構造は2027年4月の犯収法改正でさらに加速します。改正の全体像は犯罪収益移転防止法の2027年改正で、オンライン本人確認はマイナンバーカードに一本化に整理しました。

なお、保険の欄に「マイナンバー収集」という用途が混ざっている点に注目してください。本人確認とマイナンバー(個人番号)の収集は別の目的です。前者は誰であるかの確認、後者は法定調書などに使う番号そのものの取得で、必要な手続きも保管ルールも異なります。事例を読むときは、その企業が何のためにカードを使っているのかを分けて見る必要があります。

行政・公共: 認証と署名の両方で定着済み

制度としてのマイナンバーカード認証が最も長く使われているのは行政サービスです。これらは事業者が導入を検討するときの「枯れた実績」として参照できます。社内で前例を求められたとき、民間事例より説得力を持つ場面もあります。

  • 確定申告(e-Tax): 署名用電子証明書による電子申告
  • コンビニ交付: 住民票・印鑑証明書等の取得で利用者証明用電子証明書を使う
  • マイナポータル: 行政手続のオンライン申請・自己情報の閲覧
  • マイナ保険証: 医療機関での資格確認(利用者証明用電子証明書)
  • マイナ免許証: 2025年3月開始。運転免許証との一体化
  • 日本郵便: オンライン転居届やe-letter(MyPost)受信時の本人確認

行政用途では、署名が必要な手続き(確定申告)は署名用電子証明書、ログイン相当の手続き(コンビニ交付・保険証)は利用者証明用電子証明書、という使い分けが徹底されています。

この使い分けは、そのまま民間サービスの設計指針として使えます。自社の用途が「本人であることを確認して通す」だけなのか、「本人が意思表示した記録を残す」必要があるのか。ここで選ぶ証明書が変わり、契約構造も開発範囲も変わります。2種類の証明書の違いは署名用電子証明書と利用者証明用電子証明書の違いで扱っています。

電子契約・電子署名: マイナンバーカードで実印相当の署名

契約分野では、マイナンバーカードの署名用電子証明書を使った電子署名が実装されています。

  • クラウドサイン: マイナンバーカードによる本人確認を用いた電子署名に対応
  • GMOサイン(GMOグローバルサイン): 自社のオンライン本人確認システムを使う。GMOグローバルサインはプラットフォーム事業者として2016年5月に主務大臣認定を取得し、J-LISにアクセスできる数少ない事業者
  • NTTデータ: 本人確認ソリューション「BizPICO」

立会人型(いわゆるメール認証)の電子契約に対し、マイナンバーカード署名は「確実に本人が署名した」という証明力を持ちます。契約の重要度に応じて使い分ける設計になります。

実務的には、すべての契約をマイナンバーカード署名にする必要はありません。金額や紛争リスクの大きい契約だけを当事者署名型に寄せ、日常的な書類は立会人型のまま運用する、という二段構えが現実的です。全社一律で切り替えようとすると、相手方にカード保有と読み取り操作を求めることになり、契約成立率が落ちます。

対面・店頭: 窓口の本人確認にも広がる

マイナンバーカード認証はオンライン専用ではありません。店頭での本人確認にも使われ始めています。

  • 千葉興業銀行: キヤノンの本人確認支援ソリューションを2026年5月から全店で運用開始
  • 三菱UFJ銀行: 店頭の本人確認厳格化・業務効率化でキヤノンマーケティングジャパンが支援

2027年の犯収法改正では対面の本人確認もIC読み取りが原則になる方向のため、窓口を持つ事業者の需要が今後動きます。ここで見落とされやすいのは、店頭対応はソフトウェアだけでは完結しないという点です。読み取り機材の調達、店舗ごとの設置、行員・スタッフの操作研修、機材故障時の代替手順まで含めて計画する必要があります。オンライン改修と同じ感覚でスケジュールを引くと、店舗展開の期間を見誤ります。

デジタル認証アプリ経由: 新しい波

2024年6月のデジタル認証アプリ登場以降、OpenID Connect連携での導入が増えています。事業者がカード読み取りの実装を自前で抱えなくてよいのが特徴です。

  • 三菱UFJ銀行: デジタル認証アプリを活用した公的個人認証サービスを2026年2月に発表。口座開設での活用
  • DMM: 2024年6月の提供開始にいち早く着目し、約3か月で本人確認機能を実装・先行導入
  • 東京都: 東京アプリと連携し、生活応援事業等の利用時の本人確認に使用
  • そのほかメルカリ、大和証券、シェアフル、ジモティー、ランサーズなど官民のサービスが導入

顔ぶれを見ると、金融に限らずフリマ・人材・地域情報といったサービスが並んでいます。JPKI直接方式が犯収法対象業種に集中していたのに対し、デジタル認証アプリ方式は法的義務が直接かからない事業者にも広がっているのが特徴です。実装がOpenID Connectの標準的な連携で済むため、参入のハードルが下がったことが背景にあります。

さらにデジタル庁は、2026年夏頃にデジタル認証アプリをマイナポータルアプリへ統合する予定を公表しています。利用者はログインと本人確認を1つのアプリで済ませられるようになり、事業者から見た導線の摩擦が下がる見込みです。デジタル認証アプリを使う条件や料金はデジタル認証アプリとは。民間サービスが使うための条件・料金・できないことを整理するにまとめています。

事例から読める共通パターン

  • 本丸は口座開設: 件数が集中しているのは金融の口座開設。犯収法という法的義務が導入の駆動力です
  • 認証と署名で使い分け: ログイン相当は利用者証明用証明書、契約・申告は署名用証明書。用途に応じて必要な方式が変わります
  • 2系統が併存: 従来型のJPKI直接方式(eKYCベンダー経由が多い)と、新しいデジタル認証アプリ方式が並走しています。自社に合うのはどちらかを見極める段階です
  • 対面にも波及: オンライン本人確認だけでなく、店頭窓口の本人確認にも広がり始めています

自社に近い事例を見つけるための質問

事例集は、そのまま読んでも「よそはよそ」で終わります。自社の判断材料に変えるには、次の4つの軸で事例を絞り込んでください。

質問事例の参照先
目的本人確認か、ログイン認証か、電子署名か、マイナンバー収集か金融は本人確認、行政は認証と署名の使い分け、電子契約は署名
法的義務犯収法など法令で義務づけられているか義務あり→金融の事例、義務なし→デジタル認証アプリの民間事例
チャネルオンラインのみか、店頭窓口もあるか店頭あり→千葉興業銀行・三菱UFJ銀行の事例
実装体制カード読み取りを自社で抱えられるか抱えられない→デジタル認証アプリ方式

この4軸が埋まると、選ぶべき系統がほぼ一意に決まります。自社サービスにどの方式で組み込むかは、用途(認証か署名か)と対象ユーザー、既存基盤の状態で変わります。選択肢の全体像はマイナンバーカード本人確認を自社サービスに組み込む方法は4つに、費用感はeKYC導入費用の相場。SaaS月額と自社開発の損益分岐点に整理しています。方式全体の地図はeKYC完全マップ2026、記事の読み進め方はeKYC記事の読み進め方ガイドからどうぞ。

事例を稟議資料に使うときの注意

社内提案に事例を引用する際、次の3点を添えておくと質疑で崩れにくくなります。

  • 引用する事例が「JPKI直接方式」「デジタル認証アプリ方式」のどちらかを明記する
  • その事業者が法的義務で導入しているのか、任意で導入しているのかを分けて書く
  • 用途(本人確認 / ログイン認証 / 電子署名 / マイナンバー収集)を事例ごとに特定する

この3点を曖昧にしたまま「大手も導入している」と書くと、「うちと同じ使い方なのか」という質問で止まります。逆に、自社と同じ目的・同じ系統の事例を1つでも特定できれば、方式選定の議論は一気に進みます。

まとめ

  • デジタル庁の公式リストに載るJPKI導入事業者は1,265社(2026年5月31日時点)。中心は金融機関の口座開設です
  • 行政では確定申告・コンビニ交付・マイナ保険証などで、署名用と利用者証明用の証明書を用途別に使い分ける形が定着しています
  • 電子契約(クラウドサイン・GMOサイン)、店頭本人確認(千葉興業銀行・三菱UFJ銀行×キヤノン)にも広がっています
  • 2024年以降はデジタル認証アプリ経由(OpenID Connect連携)の導入が増加。2026年夏のマイナポータル統合でさらに使いやすくなる見込みです
  • デジタル認証アプリ方式は法的義務が直接かからない事業者にも広がっており、参入のハードルが下がっています
  • 導入の起爆剤は2027年4月の犯収法改正。義務業種から順に動いています

よくある質問

Q. マイナンバーカード認証を導入している事業者はどれくらいありますか?

デジタル庁の公式リストに載るJPKI導入事業者は1,265社(2026年5月31日時点)です。中心は金融機関の口座開設で、銀行・証券・カード・保険が大きな塊を占めています。これに加えて、2024年6月に提供が始まったデジタル認証アプリ経由の導入事業者があり、デジタル庁が導入サービス一覧を公開しています。

Q. どんな業種が先行して導入していますか?

金融です。銀行(みずほ銀行、三井住友銀行)、証券(SMBC日興証券、楽天証券、野村證券)、資金移動(PayPay)、クレジットカード(楽天カード、三井住友カード)、保険(第一生命はオンライン本人確認、日本生命・明治安田生命はマイナンバー収集)などが導入しています。犯罪収益移転防止法で本人確認が法的に義務付けられている業種であることが、先行の理由です。

Q. JPKI直接方式とデジタル認証アプリ方式は何が違いますか?

JPKI直接方式は、利用者がスマホやカードリーダーでマイナンバーカードのICチップを読み取り、電子証明書を事業者(またはプラットフォーム事業者)が検証する方式です。eKYCベンダーが提供してきた本人確認はこの系統にあたります。デジタル認証アプリ方式は、デジタル庁が2024年6月に提供開始したアプリを経由し、事業者は認証結果を受け取る方式で、事業者側の実装はOpenID Connectの標準的な連携になります。

Q. 行政ではどのように使われていますか?

確定申告(e-Tax)は署名用電子証明書による電子申告、コンビニ交付は住民票・印鑑証明書等の取得で利用者証明用電子証明書、マイナポータルは行政手続のオンライン申請・自己情報の閲覧、マイナ保険証は医療機関での資格確認、マイナ免許証は2025年3月開始の運転免許証との一体化、日本郵便はオンライン転居届やe-letter(MyPost)受信時の本人確認で使われています。署名が必要な手続きは署名用、ログイン相当は利用者証明用という使い分けが徹底されています。

Q. 電子契約でマイナンバーカードはどう使われていますか?

署名用電子証明書を使った電子署名として実装されています。クラウドサインはマイナンバーカードによる本人確認を用いた電子署名に対応し、GMOサイン(GMOグローバルサイン)は自社のオンライン本人確認システムを使っています。GMOグローバルサインはプラットフォーム事業者として2016年5月に主務大臣認定を取得した事業者です。NTTデータは本人確認ソリューション「BizPICO」を提供しています。立会人型の電子契約に対し、マイナンバーカード署名は本人が署名したという証明力を持ちます。

Q. 店頭・対面でもマイナンバーカード認証は使われていますか?

使われています。千葉興業銀行はキヤノンの本人確認支援ソリューションを2026年5月から全店で運用開始し、三菱UFJ銀行は店頭の本人確認厳格化・業務効率化でキヤノンマーケティングジャパンの支援を受けています。2027年の犯収法改正では対面の本人確認もIC読み取りが原則になる方向のため、窓口を持つ事業者の需要が今後動きます。

Q. デジタル認証アプリの導入事例にはどんなものがありますか?

三菱UFJ銀行がデジタル認証アプリを活用した公的個人認証サービスを2026年2月に発表し口座開設で活用、DMMが2024年6月の提供開始にいち早く着目して約3か月で本人確認機能を実装・先行導入、東京都が東京アプリと連携して生活応援事業等の利用時の本人確認に使用しています。ほかにメルカリ、大和証券、シェアフル、ジモティー、ランサーズなど官民のサービスが導入しています。

主な参考資料: デジタル庁 JPKI導入事業者リストデジタル庁 デジタル認証アプリ 導入サービス一覧三菱UFJ銀行 デジタル認証アプリを活用した公的個人認証サービスの開始についてキヤノン 千葉興業銀行への本人確認支援ソリューション導入DMM Developers Blog デジタル認証アプリ連携

TodoONada株式会社では、マイナンバーカード認証(JPKI・eKYC)を組み込んだWebサービス・スマホアプリの受託開発を行っています。方式選定(JPKI・IC読取り・画像方式)から開発・運用までワンストップで支援し、「自社の場合、JPKI直接方式とデジタル認証アプリ方式のどちらが合うか」という比較検討からご相談いただけます。デジタル庁「デジタル認証アプリ」の利用申請・審査対応は書類作成から指摘対応まで伴走し、犯収法・携帯電話不正利用防止法など業種ごとの本人確認要件の整理にも対応します。料金の目安は認証機能組込みプラン150万円〜、認証込みアプリ開発プラン400万円〜、大規模・個別要件は1,000万円〜です。2027年犯収法対応のご相談も、マイナンバーシステム導入支援またはお問い合わせからお気軽にどうぞ。


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