エンジニア社長が2027年問題の受託を始めた理由
TodoONada株式会社の堂門です。うちは小さな受託開発会社ですが、マイナンバーカード認証・電子署名の開発を事業の柱のひとつに据えることにしました。この記事は、なぜこの領域を選んだのかという経営判断の記録です。あわせて、どこまでを引き受け、何は引き受けないと決めているのかも書いておきます。発注先を探している方が「この会社に相談する価値があるか」を判断する材料になれば幸いです。
この記事の要点
- 2027年4月の犯罪収益移転防止法の改正により、本人確認を組み込んでいる多くの事業者に期限つきの作り替え需要が生まれます
- この領域を選んだ理由は3つです。仕様が公開されていて技術で正面から勝負できること、市場に「あいだ」が空いていること、期限のある需要では先に学んだ者が役に立てることです
- 大手SaaSに乗るか完全に自社開発するかの二択で語られがちですが、実際の現場には「SaaSでは要件に合わない、でもゼロから作る体力はない」という中間の需要があります
- やらないことも決めています。番号法の制約を無視した要件、制度と実装の難しさを隠す売り方、検証していない実装は扱いません
2027年問題とは何か
前提を短く整理します。犯罪収益移転防止法の改正により、2027年4月から非対面の本人確認が大きく変わります。運転免許証の写真を送ってもらう型のeKYCが縮小し、マイナンバーカードの公的個人認証(JPKI)への一本化が進みます。制度面の詳しい解説は犯収法2027年改正とJPKIにまとめました。
これが意味するのは、本人確認を組み込んでいる事業者の多くが、期限つきでシステムの作り替えを迫られるということです。金融機関や暗号資産交換業者だけの話ではありません。古物商、不動産、携帯電話事業者など、本人確認義務のある業種は広い範囲に及びます。
私はこれを、小さな開発会社にとって数年に一度の構造変化だと見ています。技術のトレンドが変わるのではなく、法令によって「やらなければならないこと」が変わる。この種の変化は、流行り廃りと違って先送りが効きません。
受託を始めた理由は3つ
仕様が公開されていて、技術で正面から勝負できる
JPKIも電子署名も、国が仕様を公開している世界です。特別なコネクションや認可がなくても、仕様書を読み、実装し、検証できます。
これは、エンジニアが経営している会社にとって非常にフェアな土俵です。営業の人脈や過去の受注実績で決まる世界ではなく、「仕様を正しく読めているか」「実装して検証したことがあるか」が価値になります。読めば分かるものが公開されているのだから、あとは読んで作った人が強い。この構造は、規模の小ささが不利になりにくい領域だと考えました。
市場に「あいだ」が空いている
本人確認の実装は、大手eKYCのSaaSに乗るか、完全に自社で開発するかの二択で語られがちです。しかし実際の現場に入ると、その中間に大きな需要があることが分かります。「SaaSでは自社の要件に合わない、でもゼロから作る体力はない」という状態です。
たとえば、既存の基幹システムとの連携が必要で汎用SaaSの画面フローに乗せられない。あるいは、必要なのは本人確認機能の一部だけで、フルスタックのSaaSを契約するのは過剰になる。こういうケースは珍しくありません。
マイナンバーカードを使った本人確認の組み込み方式やSaaS利用と自社開発の損益分岐を整理して公開してきたのは、まさにこの「あいだ」の判断を支えるためです。どちらが正解かは事業者ごとに違います。違うからこそ、判断の材料を先に揃えておくことに意味があると考えています。
期限のある需要は、先に学んだ者が役に立てる
2027年4月という期限は、すべての事業者に共通です。誰かだけが有利なスケジュールを持っているわけではありません。
だとすれば、早く仕様を読み、実際に動かして検証し、つまずきどころを知った分だけ、後から動く事業者の役に立てます。この記事群を書いているのも、その学習を公開しているという面があります。書くためには理解しなければならず、理解したことは受託の現場でそのまま使えます。
やらないと決めていること
やることを決めるより、やらないことを決めるほうが大事だと思っています。この領域では特にそうです。
- マイナンバー(12桁)を扱うシステムの安請け合いはしません。 番号法の制約を無視した要件は、受注する前に直します。「とりあえずマイナンバーも一緒に集めておきたい」という要望は、法令で定められた事務でなければ通りません。ここを曖昧にしたまま作ると、後から作り直しでは済まない問題になります
- 「実質無料」「かんたん導入」のような、制度と実装の難しさを隠す売り方はしません。 本人確認は、実装よりも制度理解と運用設計のほうが重い領域です。簡単そうに見せる説明は、発注側の判断を誤らせます
- 検証していない実装は書きませんし、売りません。 記事も受託も同じ基準です。仕様書に書いてあることと、実際に動かしてみて分かることの間には常に差があります
これらは自分たちを縛る制約ですが、同時に、発注していただく方への約束でもあると考えています。
小さな会社がこの領域でやる意味
正直に書くと、大手SIerと同じ土俵で戦う気はありません。うちがやるのは、次のような仕事です。
| やること | 具体的な内容 |
|---|---|
| 要件定義の前の整理 | そもそもどの方式(JPKI・IC読み取り・画像方式)が自社に合うのかの棚卸し |
| 「あいだ」を埋める実装 | デジタル認証アプリ連携、既存システムへの本人確認機能の組み込み |
| 発注側に立った検討支援 | 見積もりの読み方で書いたような、RFP・見積もりのレビュー |
制度の期限が需要を作る領域では、営業力よりも「先に理解していること」が価値になります。エンジニアが社長をやっている会社にとって、これほど分の良い勝負はないと考えています。
実務としては、方式選定から開発・運用までをワンストップでお引き受けしています。デジタル庁の「デジタル認証アプリ(デジタル認証サービス)」の利用申請・審査対応は、書類の作成から指摘への対応まで伴走します。犯収法や携帯電話不正利用防止法など、業種ごとに異なる本人確認要件の整理からご一緒することもできます。
相談を受けるときに大事にしていること
いちばん多いご相談は、実は開発の話ではありません。「自社はどの方式を選ぶべきか」「そもそも何をしなければならないのか」という、要件定義より手前の問いです。
この段階でご相談いただけると、無駄な開発を避けられる可能性が高くなります。方式を決めてから相談に来ると、その方式が自社に合っていない場合に手戻りが大きくなるからです。逆に言えば、まだ何も決まっていない段階のほうが、こちらから提供できる価値は大きいということでもあります。
ですので、マイナンバーシステム導入支援へのお問い合わせは、方式選定の壁打ちからで構いません。「見積もりを取ったが妥当か分からない」という段階のご相談も歓迎します。本人確認まわりの全体像を先につかんでおきたい方は、eKYC完全マップ2026とeKYC記事の読み方ガイドから読んでいただくのがおすすめです。
まとめ
- 2027年4月の犯収法改正により、本人確認システムには期限つきの作り替え需要が生まれます
- 仕様が公開された技術の世界であり、小さな会社でも技術で正面から勝負できると考えてこの領域を選びました
- 大手SaaSと自社開発の「あいだ」に、埋まっていない需要があります。うちが引き受けるのは主にそこです
- やらないことを決めています。番号法を無視した要件、実態を隠す売り方、未検証の実装は扱いません
- 要件定義より手前の段階でご相談いただくほど、手戻りを減らせます。方式選定の壁打ちからお声がけください
よくある質問
Q. TodoONadaはどこまでの範囲を引き受けてもらえますか?
方式選定(JPKI・IC読み取り・画像方式)から開発・運用までをワンストップでお引き受けしています。加えて、デジタル庁「デジタル認証アプリ(デジタル認証サービス)」の利用申請・審査対応の伴走支援、犯収法や携帯電話不正利用防止法など業種ごとの本人確認要件の整理からのご相談にも対応します。
Q. まだ何も決まっていない段階でも相談できますか?
その段階のご相談がいちばん歓迎です。実際に多いのは「自社はどの方式を選ぶべきか」「そもそも何をしなければならないのか」という要件定義より手前の問いです。方式を決めてから相談に来ると、その方式が自社に合っていなかった場合の手戻りが大きくなります。方式選定の壁打ちからお声がけください。
Q. 費用はどれくらいかかりますか?
料金の目安は、認証機能組込みプランが150万円〜、認証込みアプリ開発プランが400万円〜、大規模・個別要件は1,000万円〜です。実際の金額は要件によって変わるため、まずはご相談ください。
Q. SaaSを使うのと自社開発、どちらがよいのでしょうか?
事業者ごとに答えが違います。大手eKYCのSaaSに乗るか完全に自社開発するかの二択で語られがちですが、実際には「SaaSでは要件に合わない、でもゼロから作る体力はない」という中間の需要が多く、その領域を埋める実装が私たちの主な仕事です。判断材料は「SaaS利用と自社開発の損益分岐」の記事に整理しています。
Q. 他社から出た見積もりのレビューだけをお願いできますか?
可能です。発注側に立った検討支援は、私たちが意識的にやっている仕事のひとつです。「見積もりを取ったが妥当か分からない」という段階でのご相談も歓迎します。
Q. マイナンバー(12桁)を扱うシステムも開発してもらえますか?
要件次第です。番号法の制約を無視した要件は、受注する前に直すことにしています。「とりあえずマイナンバーも一緒に集めておきたい」といった要望は、法令で定められた事務でなければ通りません。まずは何をしたいのかを伺い、番号を扱わずに実現できる設計を含めて検討します。
Q. 2027年4月に間に合わせるには、いつ動き出せばよいですか?
期限がある以上、早いほど選択肢が多く残ります。特に、方式選定を誤ると手戻りが大きい領域です。まだ着手していない場合は、まず「自社にどの本人確認義務がかかるのか」「どの方式が候補になるのか」の整理から始めることをおすすめします。その整理からのご相談も承っています。
TodoONada株式会社では、マイナンバーカード認証(JPKI・eKYC)を組み込んだWebサービス・スマホアプリの受託開発を行っています。方式選定から開発・運用までワンストップで支援し、デジタル庁「デジタル認証アプリ」の利用申請・審査対応も書類作成から指摘対応まで伴走します。料金の目安は認証機能組込みプラン150万円〜、認証込みアプリ開発プラン400万円〜、大規模・個別要件は1,000万円〜です。マイナンバーカード認証・電子署名の導入や2027年対応で迷っていることがあれば、方式選定の壁打ちからで構いません。マイナンバーシステム導入支援またはお問い合わせからお気軽にどうぞ。
この記事に関連するサービス
TodoONada株式会社では、マイナンバーカード認証を組み込んだシステム開発を行っています。
- マイナンバーシステム導入支援 — JPKI・eKYC対応の本人確認をワンストップで
導入・開発のご相談はお問い合わせからお気軽にどうぞ。検討段階のご相談も歓迎です。